三菱商事は「脱炭素」、三井物産は「宇宙事業」に投資
トップから4位に転落した三菱商事。資源部門が逆風になっても、機械や食料などの非資源部門がしっかりと支えるというポートフォリオで首位を走ってきたが、全方位の収益低下で、その方程式が崩れてきた。そこで、デジタル領域とエネルギー分野で一体となった取り組みを進めている。その象徴が電力分野だ。再エネ発電容量を倍増する計画を進めており、洋上風力発電に照準を定めている。
欧州でのプロジェクトに参画し、ノウハウを積み上げてきた。2020年3月には、中部電力と共同で、オランダの再エネ企業、エネコを約41億ユーロ(約5000億円)で買収。そのノウハウを吸収しようとしている。
三菱商事の垣内威彦社長は「脱炭素は全社一丸のテーマ」だと語っている。
業界3位が定位置だった三井物産は、2021年3月期決算で、純利益はコロナ禍の影響で前期比14%減の3354億円だったが、伊藤忠に次ぐ2位となった。業績浮上の原動力となったのが最近の資源高だ。鉄鉱石や原油、天然ガスなどの資源事業が稼ぎ頭になっている。
そのため業界で「資源一本足打法」と揶揄されてきた。現在の市況高がいつまで続くのか分からないので、非資源事業の拡大を急いでいる。
その種まきの一つが宇宙事業だという。莫大な開発費を投じるロケット開発ではなく、人工衛星を宇宙に運ぶ橋渡し役だ。「人工衛星のライドシェア」を行う米企業をパチスロメーカーで航空機リースも手掛ける山佐と共同で買収。事業リスクも低く、着実に利益を上げることができる、と見ている。
過去最大の赤字に転落した住友商事。唯一黒字を出したのがメディア・デジタル部門だ。利益の中核をなすのがKDDIと折半出資する国内最大のケーブルテレビ(CATV)事業者であるジュピターテレコム(J:COM)。
次世代通信5Gの普及によって、有線の優位性が崩れる恐れがある。しかし、5Gの展開には、その後ろに有線回線の整備が必要なため、CATV事業者には強みもある。住友商事は5G事業を新たな収益拡大の機会にしようとしている。とくに工場や商業施設など限定されたエリアで展開する「ローカル5G」では、商社の中で唯一、免許を取得。実証実験も行った。
また、純利益で3位に躍り出た丸紅は、大型投資の失敗を反省し、代替タンパクなど「未来の食」に布石を打っている。大豆からつくる植物肉に注目。国内の植物肉スタートアップ、DAIZ社に出資し、米国進出に向けたマーケティングを共同で行うことで同意した。
丸紅の柿木真澄社長は「1個の大型案件より、100個の稼ぐ案件」と語り、小粒でもいい事業をそろえようという方針だ。
特集のパート2では、「ますます際立つ商社の社風と実力」をキャラで分析したり、匿名の座談会を開いたりしている。商社希望の就活生なら必読の特集だ。