石油元売り中堅の富士石油の株価が2021年5月28日の東京株式市場で一時、前日の終値比80円(36.5%)高の299円まで急伸した。終値は前日比53円(24.2%)高の272円。
旧村上ファンド系の投資会社、シティインデックスイレブンス(東京都渋谷区)が富士石油株を5.03%取得したと伝わり、株主還元策の強化などによる株価上昇を期待する思惑から買いが集中した。シティインデックスがさらに取得を進める可能性もあり、今後注目を集める銘柄になりそうだ。
「BtoB」の会社であまりピンとこないかも......
富士石油と言ってもあまりピンとこない向きもあるかもしれない。会社の横顔を確認しておくと、全国のガソリンスタンドで個人ユーザー向けに営業しているわけではなく、千葉県袖ケ浦市の袖ケ浦製油所で精製した石油製品を電力会社や石油元売り、化学・鉄鋼メーカーに販売するBtoBの会社。社名が人口(じんこう)に膾炙(かいしゃ)しているわけではないのはそのためだ。
2021年3月期連結決算は、売上高が3446億円、営業利益が70億円。ちなみに石油元売り最大手のENEOSホールディングスの同じ期は売上高が7兆6580億円、営業利益が2541億円という規模感だ。
設立は高度成長さなかの1964年でアラビア石油、東京電力(現東京電力ホールディングス)、住友化学。日本鉱業(現ENEOSホールディングス)などの出資によるものだった。
2020年9月末の上位株主(信託銀行を除く)は、筆頭がJERA(東京電力HDと中部電力が折半出資して火力発電部門を統合した会社)で8.85%、クウェート石油公社とサウジアラビア王国政府がともに7.52%で続き、出光興産(通称・出光昭和シェル)が6.66%、住友化学が6.54%、日本郵船が3.56%、ENEOSホールディングスが1.74%。このように主要顧客ないし取引先が大株主に並ぶなか、シティインデックスイレブンスは一躍、住友化学と日本郵船の間に躍り出る格好になった。