住宅地価は東京圏と大阪圏・名古屋圏で状況に大きな違い
一方、住宅地では東京圏において、都心エリアの住宅地価の下落傾向および周辺ベッドタウンのわずかな上昇が明らかになりました。巷間言われるところの「居住ニーズの郊外化」が地価動向にも表れたとされています。
東京23区の区ごとの平均公示地価は、港区と目黒区を除いて21区で下落。前年は23区および隣接する行政区すべてで2~5%程度の上昇を記録していたので、都心とその周辺エリアのコロナによる地価反転下落という結果です。また、これもコロナの影響なのか、千葉県松戸市、市川市、船橋市、茨城県守谷市、埼玉県川口市、戸田市など首都圏準近郊~郊外エリアの住宅地価は、わずかに上昇しています。これはテレワークやオンライン授業などの導入・定着で毎日都心周辺に通勤・通学しなくても良くなった人たちが積極的に郊外方面で住宅を探し始めているという状況とリンクしています。もちろん大多数がそのような行動を取ったということではなく、一部の目立った動きが取り上げられたものです。
大阪圏の住宅地では大阪市福島区、中央区、天王寺区や北摂エリアの箕面市、池田市、宝塚市、神戸市東灘区、灘区、京都市中京区、上京区、下京区など、いずれも市街地中心部の住宅地価は前年からわずかに上昇し、東京とははっきりした違いが示されました。
名古屋圏でも同様に住宅地が上昇したのは名古屋市中区、港区、南区など名古屋市中心部と郊外の大型商業施設が建設されたエリアのみです。
つまり、東京圏では都心の住宅地価が下落し、大阪圏・名古屋圏では中心部の住宅地価のみ上昇するという正反対の結果となりました。市街地中心部の「利用価値」はいずれも高いはずなのに、どうしてこのような結果になったのでしょうか。
要因は二つあります。一つは都市圏の圏域の規模です。東京圏は圏域の範囲が広いため、都心から電車で1時間程度郊外方面に移っても生活圏としての違いは専ら物理的な通勤・通学時間だけで、生活スタイルや利便性といったものは極端に異なることはありません。
したがってこれまでと同じような生活スタイルを維持し、それに加えてテレワーク対応や感染防止、家賃や住宅ローンなどのコスト負担を軽くする目的で郊外方面に転居する人が増えたと見ることができます。一方、大阪圏・名古屋圏は市街地中心部から電車で1時間程度移動すると生活圏が異なるケースが多々見受けられるため、コロナの感染拡大でも転居を検討する素地が少ないと考えられます。