ニッポンの自動車産業の新しいルーツとは何か?

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日本の自動車産業は没落した家電産業のようになる?

   海外では、最後に中国の動きを紹介している。2020年の中国での新エネルギー車販売台数は、前年比11%増の約137万台(EV112万台、プラグインハイブリッド車25万台)。そのうち米テスラが12万台で、同社の全世界での販売台数は約50万台だから、4台に1台を中国で売ったことになる。2019年、上海に年産50万台の工場を建設。今後は欧州、日本への輸出も予定しているという。

   新たな動きとして、バイドゥ、アリババ、テンセントという巨大IT企業に資金的に支えられたNIO、BYDなど巨大EVスタートアップ企業の勃興がある。IT企業は、車単体ではなく、その先にある都市インフラから交通プラットフォームまで、幅広い視点で事業に進出する機会を狙っているという。大手の上海汽車集団もCASEには積極的に取り組んでいる。

   さて、冒頭で触れた自動車産業の新しいルールとは何か。川端さんは3つ挙げている。

(1)自動車がIoT(Internet of Things=モノのインターネット)に組み込まれ、パソコンやスマホのようなモノになる
(2)垂直統合から水平分業への変化
(3)データとソフトウェアを制する者がすべてを支配する

   川端さんは、モノづくり信仰、垂直統合(系列)への強いこだわり、自前主義、電気・材料・IT系エンジニアの軽視、「形のないもの」にお金を払えない、という5つの弱点を改善すれば、日本の自動車産業にはまだまだ世界と戦う力が十分にある、と結論づけている。

   しかし、世界がEVに向けて走り出しているのに、日本は政府もユーザーも動きが鈍い。日本の携帯電話は「ガラパゴス化」した存在になってしまった。日本のエンジン車がそうならないとは断言できない。

   日本の自動車産業が、没落した家電産業のようにならないことを祈るばかりだ。

「日本車は生き残れるか」
桑島浩彰、川端由美著
講談社現代新書
990円(税込)

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