「セブン-イレブン」を運営するセブン&アイ・ホールディングス(HD)による米コンビニエンスストア大手の買収に横ヤリが入った。
米連邦取引委員会(FTC、日本の公正取引委員会に相当)の一部の委員が、反トラスト法(独占禁止法)違反の懸念があるとの声明を出したのだ。セブン&アイHDは今後、買収の修正、さらには撤回を求められる可能性も取りざたされている。
「全米のコンビニで価格高騰を招く」
J-CASTニュース「セブン&アイ『勝算』の根拠 米コンビニ買収には懸念もあったが...」(2020年8月16日付)で詳報したように、2020年夏、セブン&アイHDが、米石油精製大手マラソン・ペトロリアム傘下のコンビニエンスストア「スピードウェイ」を210億ドル(当時のレートで約2兆2000億円)で買収するという話がまとまった。
セブン&アイHDは米国で、本家のセブン-イレブンを「逆買収」するなどにより、すでに約9000店を展開し、業界首位の座にある。これに、ガソリンスタンド併設型のコンビニ約3900店を展開するスピードウェイが加われば、2位をダブルスコアの差をつけて引き離す。日本の国内市場が成熟化するなか、海外強化で成長軌道を維持したいという狙いだ。
こうした買収は、市場の寡占化、競争制限につながる可能性があるため、FTCの審査を受ける。セブン&アイ側は審査が終了したとして、5月15日、買収完了を発表した。ところが、この発表に対してFTCのレベッカ・ケリー・スローター委員長代理、ロヒット・チョプラ委員の2委員が、買収に異を唱える声明を発表したから、話はややこしい。
声明は、買収が「独占につながる懸念がある違法なものだ」と指摘し、全米のガソリンスタンドやコンビニでの価格高騰を招くと非難。さらに、司法当局と連携して調査を継続し、反競争的な弊害に対処するため「適切な道筋を決める」と記している。
FTCの審査では、問題はなかったのか。
審査はセブン&アイHDが買収を届け出て、FTCが問題点を質問し、必要な資料を求める――。そんなやり取りが、数か月続いた。店舗網の買収では、地域によって市場の支配力が強まることもある。これについてセブン&アイHDは、スピードウェイ293店(給油所)を売却することとし、これにより「競争上の懸念をすべて解消する」という内容の和解契約などをFTCと締結したという。
FTCの審査では、企業側(セブン&アイHD)の回答を受け、FTCが30日間、追加質問、資料要求などをしないと、買収を承認したものとみなされる。セブン&アイ側は、FTCとの質問、回答などのやり取りが最後にあったのは4月9日だったとして、30日ルールによって承認されたと判断。買収完了の発表(5月15日)に至った。