中国の技術力はもはやトップレベル
中国共産党は2020年10月、新5か年計画で「双循環を通じて経済の拡大を図る」との方針を決定した。これは輸出を中心とした外需(外循環)と国内消費を中心とした内需(内循環)の両方を組み合わせるという意味だ。だが事実上、内需主導経済へのシフトと考えて間違いないという。
中国政府は1980年代の日本が取った内需拡大策とその失敗をつぶさに検証しており、加谷さんは「中国は比較的容易に消費社会にシフトできるのではないか」と見ている。
第3章では、トランプ政権は「関税」という「伝家の宝刀」を抜いたが、結果的に中国の台頭を加速させるという皮肉な結果を招いた、と批判している。関税というカードにはもはや大きな効果がないことがわかってしまったのだ。
このところ中国は香港弾圧を強化したり、デジタル人民元の配布をしたりするなど。米国への配慮をまったく見せていないが、それも関税という最大の弱点が消滅した影響だと見ている。
本書を読んで、最も衝撃を受けたのは、「第4章 中国の技術力はもはやトップレベル」のくだりである。日本政府が保有する1000機以上のドローンのほとんどは中国製であることや国際特許の出願数で中国が米国を抜いたことを紹介している。
また、2020年における世界のユニコーン企業513社のうち、約半数が米国企業で、約25%にあたる120社が中国企業。日本企業は4社のみだ。
航空機産業でも自国製の開発を進め、形式証明を武器に世界の航空機市場をコントロールしてきた米国の覇権が崩れる可能性も否定できないという。
中国は国策として電気自動車(EV)へのシフトを進めている。中国は世界最大の二酸化炭素排出国なので、環境問題への対応でもあるが、それだけではないと指摘する。後発である中国メーカーが日米欧を追い越すチャンスでもあり、自動運転、ITサービスとリンクさせることで、想像を超える巨大なビジネスが生まれる可能性があるというのだ。