朝礼1話は3つのパートで
1話分をまるまる引用するわけにはいかないので、一つのネタからどう話を組み立てているかを見てみたい。
「過去の自分よりも、成長した自分を信じましょう」というタイトルの話がある。「私が新人のころ、商談に失敗して落ち込んでいると、先輩がケンタッキー・フライド・チキンをおごってくれました。みなさんは、創業者のカーネル・サンダース氏が、レシピの売り込みを1000回以上失敗したのを知っていますか」と切り出す。有名人の失敗談は、関心を引き付けるネタだ。
「カーネル・サンダース氏を見習って、1000回失敗しても挑め」と先輩は叱ったわけではなく、「どういうトークをしたら失敗するのかという知識を今は持っている。だから、次はきっと成功する」と励ましてくれたという。
そして、「過去の自分とは違う、成長した自分を信じようと考えたら、次は成功するような気がしてきました。そのとき知ったポジティブさこそが私の原動力です。みなさんもプラス思考を忘れないでください」と結んでいる。
この話に限らず、本書で紹介しているネタはだいたい以下の3つのパートからなるようだ。構造は簡単だ。
1 エピソードの披露
2 エピソードの展開
3 自分なりに教訓化して決意を述べる
これで文字にすると、33字×16行=528字、約1分15秒程度のスピーチになる。
なんでもエピソードのネタになるものだ、と感心した。たとえば「割れ窓理論」についてお話ししたい、と切り出す。これは窓を割れたままにしておくと、犯罪が起きやすくなるので、小さな犯罪を徹底して取り締まることで、凶悪犯罪の発生率を抑えられるという犯罪抑止論の考え方だ。
ここから、ディズニーランドやディズニーシーへと話を展開する。ちょっとした施設の傷や傷みも見逃さず、こまめに補修。また、小さなゴミひとつ落ちていない状態に徹底することで、スタッフだけでなく、来場者のマナー向上にも役立っている、と話をつなげる。
最後に、「これは私たちの仕事にもあてはまる」として、一人が机の上を散らかすと、周囲もどんどんルーズになるので、一人ひとりが、「自分くらい」「ちょっとくらい」と考えず、「一仕事一片づけ(一つの仕事をしたら一回片づける)を心がけましょう」と教訓化している。
漫画「ワンピース」や「ドラえもん」も本書では、話のネタになっている。ネタ本に頼らず、自分の趣味や読んでいる本、漫画などから、何かネタにならないか、と日々考えることで、おもしろい朝礼ができるようになるだろう。
ネタ本を丸暗記するのではなく、自分なりにアレンジすることができれば、朝礼は怖くなくなる。
(渡辺淳悦)
「元気が出る朝礼 話のネタ帳」
本郷陽二著著
アニモ出版
1540円(税込)