インド政府への「忖度」から水際対策に遅れた
実際、検疫をくぐり抜けてどんどん入り込んでいる。朝日新聞(5月26日)「国内で広がるインド株の脅威 検疫に限界、市中感染も」がこう伝える。
「インド型変異株の国内での感染事例が広がっている。厚生労働省の26日の発表では、これまでに国内で29人が感染していた。空港検疫では17日までに160人の感染が確認されている。検疫以外で初めて見つかったのが4月20日。その後、約1か月で数十人規模に増えたことになる。東京都発表のうち9人は、海外渡航歴がある人との接触などが確認された事例で、検疫での流入を防ぐことには限界があったことを表している。海外と直接の関連が追えない例もある」
つまり、市中感染がすでに始まっているということだ。朝日新聞はインド型変異株の厄介な特徴も、こう書いている。
「インド型で懸念されるのが、従来株に感染した人にできた免疫の効果が弱まる可能性だ。再感染だけでなく、回復者の血液成分を使った治療法や従来株の情報でつくられたワクチンの効果に影響するおそれもある。ただ、ワクチンについては、ファイザー製の2回接種でインド型にも『有効だ』とする英イングランド公衆衛生庁の検証結果もある。世界保健機関(WHO)は、感染力が増す恐れがある『懸念される変異株(VOC)』にインド型を指定した。感染が確認されたのは、南極を除くすべての大陸の50以上の国・地域に及んでいる」
水際対策が、大きく遅れた理由を朝日新聞がこう説明する。
「インドの1日あたり新規感染者数が37万人を超えたころで、自民党からは『水際対策の動きが遅い』(佐藤正久・党外交部会長)との厳しい指摘が出た。政府関係者は遅れの背景に『インド政府が変異株の流行を認めなかったこと』などを挙げた。インドでは連日40万人を超える新規感染者が出るようになり、5月7日には周辺国からの入国者も含め、検査回数を3回から4回に増やした。宿泊施設での待機も6日間にした。だが、政府の対策分科会の尾身茂会長から『14日間に』といった発言も出たため、5月25日に10日間まで延ばした」
例によって、インド政府への「忖度」によって後手、後手に回ったのだ。そのうえ、インドを抜いて「感染爆発世界一」になったマレーシアを5月28日現在、いまだに除外していることは前述のとおりだ。
(福田和郎)