経済界も反旗! 菅政権のコロナ対策「無茶ぶり」と「脅し」に無言の抗議(2)

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「高齢者のワクチン接種に社内診療所を使わせろ」
「在宅ワークを達成させるために、企業の名前と数字を公表する」

   やることなすこと、行き当たりばったりのくせに、要求だけは「脅し」まがいの上から目線......。

   政府の新型コロナウイルス対策に協力を惜しまなかった経済界も、さすがに堪忍袋の緒が切れたようだ。

   各自治体の知事の反乱に続き、経済界にまで反旗を翻され、お先真っ暗の菅義偉首相。大丈夫か、ニッポン!

  • 社内診療所に多くの高齢者が来てもセキュリティーに困る企業が……
    社内診療所に多くの高齢者が来てもセキュリティーに困る企業が……
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テレワークのお粗末な企業名を就活生に公表するぞ

   そもそも、政府の行き当たりばったりのコロナ政策に振り回されてきたという怒りが経済界にある。産経新聞(5月26日付)がこう続ける。

「昨年来、経済界は政府のテレワーク要請など、さまざまなコロナ対策に全面的に応じてきた。しかしこうした要請では、政府側が内容を事前に打診するなどして実現可能性を把握したうえで、公にしてきた。(ところが最近は)ある経済界の関係者は『会談の日程だけ決められて、その場で大臣にこれをやってほしいといわれても、現実問題としてできないこともある』と強調。結果として経済界が応じられなかった場合、『コロナ対策に非協力的なように見えてしまう』と困惑する。コロナ対策では今後も官民の連携が欠かせないが、『いきなりの指示や要請は困る』(関係者)というのが経済界の本音だ」

   河野太郎大臣の「社内診療所の活用」も、「いきなりの要請」だったわけだ。

   もう一つ、経済界を怒らせたのが、西村康稔経済再生担当相が5月11日に発表した「テレワークに関する上場企業の情報開示」である。

   企業ごとのテレワーク実施率を公表して、出勤者数の7割減を強引に達成させるというのだ。経済産業省が上場企業など約3800社にテレワーク実施率のアンケート調査を行い、ホームページ上に一覧サイトをつくる。企業名とともに載せるURLから、各社がテレワーク状況(従業員の在宅ワーク実施率とテレワーク実現のための取り組み)を開示するページにアクセスできるようにする。

ワクチン接種に協力したいが......
ワクチン接種に協力したいが......

   そして、学生の就職支援サイト事業者と連携して就活学生にも周知、就活生の企業選びの参考にさせるという「脅し」に使おうというわけだ。

   朝日新聞(5月20日付)「『そんな段階ではない』テレワーク要請の西村氏に経済界が反論』が経済界の怒りを、こう伝える。

「もう、そういう段階ではない――。5月20日、テレワークへのさらなる取り組みを要請した西村康稔経済再生相に対し、経済界側が『反論』する場面があった。西村氏はこの日、中京圏と九州圏の経済団体とテレビ会議に参加。西村氏は、テレワーク状況の公表に協力したのが中京圏で10社、九州圏で7社のみだったと指摘した。各団体からテレワークを強調する西村氏に対して異論が噴出。名古屋商工会議所の山本亜土会頭は『もう、そういう段階で解決できるのは厳しい。現状を打破する唯一の手段はワクチン接種だ。これ以外に有効な手立てがない』と訴えた。中部経済連合会の水野明久会長も『いずれにしてもワクチンの接種が広がっていかないと収束に向かわない』と主張した」

   経団連幹部の中には「何%と明示せよと言うことなどあり得ない話だ」と、怒りをぶつける人もいたという。

政府の「脅し」に屈しない日立と伊藤忠の意地

   企業側が猛反発するには理由がある。政府自身の省庁のテレワーク実施調査が極めていい加減だからだ。最新の省庁テレワーク実施調査の結果は、全省庁の平均で約6割(今年1月)だが、調査にはカラクリがあった。朝日新聞(5月20日付)「『無理やり在宅に』霞が関のテレワーク調査、事前に通知」が調査の実態をこう暴露する。

「中央省庁ではテレワーク実態調査が5月19日にもあったが、内閣人事局が各省庁に事前に実施日を知らせていた。調査期間も1日だけで、調査に合わせて在宅勤務を一時的に増やした職場もあった。19日、ある経済官庁の本庁舎はひっそりとしていた。課長や課長補佐ら管理職しか出勤していない部署もあった。ある幹部は『事前に通達があったから無理やり在宅勤務を増やしたが、単なる帳尻あわせだ。国会の答弁書の作成や与党の部会の資料づくりがある時に7割減なんてできるわけがない』と本音を漏らす」
アンケートに答えず、最先端技術のコロナ対策で応じた日立のホームページ
アンケートに答えず、最先端技術のコロナ対策で応じた日立のホームページ

   別の幹部は、朝日新聞記者の取材に、

「国会からの質問の分野次第では他省庁との調整も必要なのに、省庁をまたいでオンライン会議する仕組みもない。民間企業に数値目標を示す前に(我々が)整えることがあるのでは」

とこぼす有り様だという。

   中央省庁がこんな体たらくだから、西村康稔経済再生相の「脅し」に屈する企業はわずかだった。経済産業省のホームページに掲載されている「事業者におけるテレワーク等の実施状況」をみると、5月25日現在、アンケートに回答を寄せた企業は、3800社中573社(15%)だけだ。

   それでも調査に応じた著名企業のURLをクリックしてみると、たとえば、花王の在宅実施率(出勤者削減率)は72~78%、住友化学が65~70%、本田技研工業が58~69%などとある。

   しかし、伊藤忠商事は「テレワークの取り組み」だけを列挙するだけで、実施率は書いていない。

   日立製作所に至っては、アンケートにはまったく答えておらず、URLをクリックすると、「新型コロナウイルスの感染拡大への日立の対応」という同社のホームページのトップに飛んだ。「AIを使った非接触型の入退室管理システム」や「新型コロナウイルスにも応用できるAIを使ったインフルエンザ流行予報」など、同社のさまざまな感染防止の最先端技術が紹介されている。

   「テレワーク実施率〇〇%」などとチマチマした数字だけをあげつらうな!と政府に無言で抗議をしているようにみえる。

(福田和郎)

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