ブリヂストンの株価が東京株式市場で上昇基調にあり、2021年5月20日まで7日連続で終値が前営業日を上回り、18年4月以来、約3年ぶりの高値圏に突入した。
4連騰後の17日の取引終了後に発表した2021年1~3月期連結決算(国際会計基準)の内容が続伸の材料となった。
天然ゴム、原油といった原材料価格が上昇する中で、利益を出していることが評価されている。ただ、利益改善はタイヤの販売本数全体の伸びというよりは高級タイヤが増えたことによる面が大きく、世界の回復需要を取り込んで今後も力強い成長を見せるかどうかは見方が分かれそうだ。
生産現場の「カイゼン」が利益押上げ
決算内容を確認するその前に、2020年12月期通期は最終損益が69年ぶりの赤字233億円(前期は2401億円の黒字)を記録していた。コロナ禍の需要減に加えて、中国のトラック・バス向けタイヤ事業などの減損損失を計上したことも影響した。
その赤字決算からの回復度合いを計る、2021年12月期の第1四半期にあたる1~3月期の売上収益(売上高)は、前年同期比7.2%増の7568億円(売却する北米建設資材事業を除く継続事業ベース=以下同)。減損損失などを除いた「調整後営業利益」は78.7%増の823億円、最終利益は3.6倍の602億円だった。
世界的にタイヤ需要が回復するなか、トラック・バス向けを中心に販売が伸びた。利益率の高い高インチタイヤの伸びも利益改善に寄与した。また、トヨタ自動車ばりの生産現場の改善活動による加工費削減効果が60億円あり、利益を押し上げた。
一方で原材料は上昇ないし高止まりしている。原油は1~3月期に1バレル=58ドル程度で2020年10~12月期の43ドル程度から35%も上昇。前年同期に比べても26%上昇した。天然ゴムは種類によって前年同期比26~48%値上がりした(10~12月期比では横ばいないし微増)。こうした原材料費の逆風にもかかわらず利益をあげている点を投資家は好感している。
SMBC日興、野村証券で高まる評価
SMBC日興証券は2021年5月17日付のリポートで、「結果としてタイヤ事業全体で14%水準の高い調整後営業利益率を確保できていることは好印象」と記した。
野村証券も同日付のリポートで、ブリヂストンの目標株価を4200円から4500円に引き上げた。「第2四半期以降は原材料高で採算は減速するも、会社計画(業績予想)の据え置き(第1四半期の好決算を受けても修正しないこと)は保守的と判断した」とした。ただ、「業界全体の需要に比して販売数量はそこまで好調ではない」と指摘。「プレミアム製品の販売価格を維持しながら販売数量を拡大できるかが論点になるだろう」とした。
自動車業界は、半導体不足という問題を抱えながらも最終製品の需要自体は堅調。その全体の傾向についていけているかが問われることになりそうだ。(ジャーナリスト 済田経夫)