放映権を持つNBCは「五輪を放送する」
ここで、米国務省のトラベル・アドバイザリー(渡航情報)の仕組みをおさらいしておこう。同省のホームページをみると、渡航警告レベルが4段階に分かれている。最高に危険なレベル4「渡航を中止せよ」(Do not travel)、レベル3「渡航を再考せよ」(Reconsider Travel)、レベル2「Exercise Increased Caution」(注意して行動せよ)で、レベル1はない。それぞれの国ごとに感染状況の実態、そして渡航するにあたっての注意事項が詳しく書き込まれている。
日本はこれまで「レベル3」だったが、今回、レベル4に引き上げられたわけだ=写真参照。
ちなみに、非常に危険な「レベル4」は約150か国・地域で、全世界の7割以上に達する。ドイツ、フランス、スペイン、イタリア、デンマークなどイギリスを除くヨーロッパのすべての国が含まれる。ほかにインドネシア、北朝鮮、タイ、インド、ロシア、メキシコ、ブラジルなど。「レベル3」は計42か国・地域で、イギリス、イスラエル、台湾、中国、モロッコなど。比較的安全な「レベル2」は計16か国・地域で、韓国、シンガポール、ベトナム、ブータン、ジンバブエ、ザンビアなどだ。
今回の米国務省の「日本への渡航禁止」勧告を海外メディアは大きく取り上げた。米ブルームバーグ通信は「五輪を開催する準備は整っていると、日本国民や国際社会を納得させようと四苦八苦している日本にとって、新たな打撃となった」と報じた=写真参照。
CNNテレビも「日本は、開催に向けてますますハードルが増える状況に直面した。医療従事者の不足し、他のアジア諸国と比べてもワクチンの普及が遅れている。全米25州の成人の50%がワクチン接種を終えた米国と比べて著しく対照的だ」と、ワクチン接種の遅れが米国務省の懸念を招いたと報じた=写真参照。
また、AP通信も「今回の国務省の発表が、米国選手の参加の判断に影響を与える可能性がある」と指摘した。
注目すべきは、東京五輪のテレビ放映権を独占し、IOCに絶大な影響力がある米NBCニュースもCDCが「日本への渡航中止」を警告したことを報じたことだ。ただし、記事の最後に、
「NBCは東京五輪を放送する」
と明言した。その理由としてあげたのが、IOCのジョン・コーツ副会長が、「東京が緊急事態宣言下でも絶対に開催する」と記者会見で述べた次の言葉だった。
「参加するすべての人にとって安全であり、日本の人々にとっても安全であることが明白になった」
NBCのこうした姿勢もIOCに負けず劣らず日本国民の神経を逆なでしそうだ。
(福田和郎)