「緊急事態宣言下でも五輪開催」化けの皮がはがれたIOC幹部の暴言に日本国民の怒りの声(1)

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北風を吹きかけるどころか、ツララを刺してきた

   この発言に、スポーツニッポン(5月22日付)の取材に応じたスポーツ文化評論家の玉木正之氏はこう批判している。

「緊急事態宣言下の東京で、数百人規模のテスト大会が実施できたことを理由に、数万人規模の五輪も開催できるというコーツ副会長の発言は、あまりにも無責任で、呆れ返った。自身の母国オーストラリアでも、同じことが言えるだろうか。2日前にバッハ会長は『日本は逆境に耐え抜く能力を持っている』と空疎な精神論を展開している。彼らの発言によって、五輪離れはますます進むだろう」

   コーツ副会長の日本国民の気持ちを逆なでする発言に対して、スポーツ紙各紙の五輪担当記者は、それぞれのコラムで「IOCは自ら墓穴を掘った」と痛烈に批判する論陣を張った。

   スポーツ報知(5月22日付)の「記者の目:コーツ発言は傲慢(ごうまん)さの発露『答えはイエス』はIOCと組織委にとって痛い〈悪手〉」では、太田倫記者がこう指摘した。

「東京五輪組織委の橋本聖子会長が『3徹』(3つの徹底)のスローガンを掲げて懸命に国民に理解を求める中、何としても開催にこぎ着けたいIOCの本音が漏れた。『北風と太陽』に例えるなら、何とか国民の心を暖めようと苦慮してきたのが橋本会長で、そこへ冷風を吹きかけるどころか、ツララを刺してきたのがコーツ氏だ。発言のよりどころの一つは、宣言下でのテスト大会の成功にある。どれもクラスターの発生はなく、一見スムーズ。だが、結局は無観客で行ったもので、完全なモデルケースになったとは言い難い。世界各地で国際大会が開かれたと言っても、五輪とはケタが違いすぎる。今の東京大会はまさに『絵に描いた餅』で、やってみなければ分からない危うさがある。コーツ氏の自信の根拠は軽い。『やると言ったらやるんだ』という傲慢さの発露にしか聞こえない」

   太田記者はこう続けた。

「コーツ氏が『日本はペンディング(先送り)ばかりだ』と不満を漏らしていると聞いたことがある。彼には、ワクチン普及の遅さや、欧米と比較しても感染爆発の規模が小さく見えることも、いらだちを助長していた。『答えはイエス』はIOC、そして組織委にとっても痛い〈悪手〉となった」

   スポーツニッポン(5月22日付)の「記者の目:コーツ副会長の発言は、IOC自ら五輪開催への道を閉ざしかねない暴挙」でも、藤山健二記者が致命的な暴言だと指摘する。

「いったい誰のための、何のための五輪なのか。コーツ氏の発言は、感染拡大を食い止めるために多大な犠牲を払っている日本国民の気持ちを逆なでし、IOC自らが五輪開催への道を閉ざしかねないとんでもない暴挙だ。東京五輪のテスト大会や、世界各国の国際大会でクラスターが発生しなかったのは、1競技だけの単発の大会だったからだ。国民が恐れているのは、10万人近い海外からの選手や関係者が、同じ時期に同じ場所に集結して巨大な〈密〉が発生することであり、数百人程度の単発大会とは規模も危険度もまったく違う」

   藤山健二記者はこう結んでいる。

「『アスリートのために開催してあげたい』という気持ちは誰もが同じだ。だが、チャンスに人生を懸けているのはアスリートだけではない。晴れやかな舞台でなくとも、それぞれが小さな幸せを求めて毎日懸命に努力している。一生に一度の全国中学大会や高校総体を奪われた子供たちに、どんな顔をして『五輪だけは特別』と言えるのか。コーツ氏の発言は、五輪開催か否かを巡る論議に、決定的な一打となるかもしれない」
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