ビジネス雑誌のインタビュー記事も参考に
このほかに、アメリカが月面着陸を目指す「アポロ計画」を勧めてきた時代に、大統領がNASAを訪問。一人の清掃員に声をかけると、「はい、大統領閣下、私はこのオフィスを掃除することで、人類を月に送ることに貢献しているのです」と答えたエピソードを紹介。任された「小さい仕事」は大きな使命を果たすためにあることを示している。
各章では、ネタ探しのコツも披露している。お勧めのネタ元はビジネス雑誌のインタビュー記事だという。「苦境の乗り越え方」「成長するためにしたこと」が参考になるという。また、有名なスポーツ選手の下積み時代の話も「自分も頑張ろう」と共感を呼ぶそうだ。
「他の人に教えたい」「やってみたい」と聞き手に思わせる豆知識・雑学も朝礼ネタにぴったりだという。
オススメは「本日の記念日・心理学・有名企業の歴史」だ。ネタがないときは、その日の記念日を調べればいい。心理学は営業や社員教育、コミュニケーションなど、幅広く応用が利く。また、有名企業の歴史は、社名の由来やロゴマークの意味、ヒット商品の誕生秘話など話が広げられ、自社の話に繋げれば立派なスピーチになる。根拠と信頼性が大切なので、日頃から本や新聞などでネタ探しをすることを勧めている。
本書では、大手日用品メーカーの花王のロゴマークの変遷を紹介している。月を使ったロゴは現在のもので9代目。1890年の創業以来変化しているのだ。当初は右向きだった三日月が左向きになり、月の顔は男性から女性、そして子どもの表情へと変わったそうだ。現在はグローバル展開を視野に入れて、「花王」の社名が漢字から英字に統一された。他社のエピソードをきっかけにすると、自社や自分の話に繋げやすいとアドバイスしている。
最後の章で「時間をかけずに自分の力でいいスピーチをする方法」を紹介している。ネタ探しのポイントとして挙げているのが、「語源」「漢字の成り立ち」「身近な歴史」だ。
また、いつも話が面白いと言われるネタの作り方として、「裏方の話」「有名人の両親や恩師の話」「日本で初めて〇〇した人の話」があるという。
1分間でスピーチをする場合、基本的に「自分の考え+その考えを抱くようになった理由(体験)+そこから得た教訓+今後どうするかという目標」という要素を入れるとうまくまとまるという。本書で紹介しているネタは朗読すると1本で1分の長さだ。1分にまとめるには、かなりの準備が必要だ。朝礼がない会社に勤めてきた良かった、としみじみ思った。
その一方で、毎朝、朝礼があればスムーズに仕事に取り掛かれるメリットがあることも知った。在宅勤務だからこそ、「1人朝礼」をしてみるのもいいかもしれない。
毎朝の新聞からネタを探すとすれば、新聞を読み込む精度も高くなるだろう。朝礼は奥が深いことを教えてくれた一冊である。(渡辺淳悦)
「月刊朝礼が本気で考えた朝礼ネタ」
コミニケ出版「月刊朝礼」編集部著
サンマーク出版
1320円(税込)