コロナ禍による、2020年4月の緊急事態宣言をきっかけに企業のテレワーク導入の動きが強まったが、この1年に20代の若手社員の約7割が「テレワークをやめてオフィスに出社して働きたい」と思ったことがあることがわかった。
一方、管理職は人材育成やマネジメント、評価の機会を失ったり、減少したりしたとの思いが強まっている。
AI(人工知能)を活用した人事評価クラウドサービスを提供する株式会社あしたのチームが「テレワ―クと人事の課題」を調査。5月18日に発表した。
業務上の不便多い、気軽に相談がしにくい...
調査によると、1年間のテレワークの中で、「テレワークをやめたい(出社する形で仕事をしたい)」と感じたことが「あった」世代は20代が67.4%(「よくあった」の19.6%と「時々あった」の47.8%の合計)と、約7割が「テレワークをやめたい」と感じていたようだ。
30代では57%(「よくあった」18.5%、「時々あった」38.5%)、40代は48.7%(「よくあった」15.4%、「時々あった」33.3%)、50代は50%(「よくあった」10.4%、「時々あった」39.6%)だった。
「テレワークをやめたい」と思ったことがある20代に、その理由を聞くと、「業務上の不便が多いから」の45.2%が最多。次いで「(上司、先輩・同僚を問わず)気軽に相談がしにくいから」の35.5%、「仕事が単調になりがちだから」が32.3%と続いた。4位には、「孤独だから」と「上司・部下・同僚とお互いに仕事ぶりが見える方が安心だから」が並び、ともに29.0%だった。
あしたのチームが、昨年(2020年)3月末~4月初めに行った「テレワークと人事評価に関する調査」では、一般社員の36.7%がテレワークについて「人間関係のストレスがなく気楽」と回答していたが、1年間のテレワーク経験を経た今回の調査では、若手を中心に「やめたい」という割合が少なくない。
このことに同社は、
「最初は気楽と感じていたテレワークも、上司や先輩などに気軽に相談することができないことや、近くで仕事ぶりを見てアドバイスなどをしてもらえないことに不安や焦りを感じ『テレワークをやめたい』と思うようになったのかもしれない」
とみている。
部下のSOS、変化を見逃しがちに
一方、管理職に「テレワークにより部下の育成やマネジメントに関してできなくなった(少なくなった)と思うこと」を聞く(複数回答)と、「雑談によって本人の状況・状態を知る機会」が48.0%と最も多かった。次いで、「部下の異変に気付く機会」と「気軽に相談を受ける機会」で、ともに43.2%だった。
同じ職場で過ごす機会が減ることで、部下の近況を知る機会が少なくなり、また部下の表情や雰囲気などからの情報を得られなくなる。そうした状況下では「部下のSOSの気配も、大いに評価すべき変化も見逃してしまうことがあるかもしれない。管理職にとってはテレワークでの育成やマネジメントの難しさを痛感した1年だったのではないか」
と、同社は分析している。
1年前の調査では、部下を人事評価することがある管理職に、「テレワーク時の部下の人事評価について、オフィス出社時と比べてどのように感じるか」との問い(単数回答)に、73.7%が「オフィス出社時と比べて難しい」と答えていた。
その理由は、「勤務態度が見えないから」が72.6%で最多。次いで「成果につながる行動(アクション数、内容など)を細かく把握しづらいから」が67.1%、「勤務時間を正確に把握しづらいから」が45.2%、と続いた。
また1年前に、テレワークを前提とした人事評価制度について、見直しや改定の必要があるかどうかを、管理職と一般社員の双方に質問。一般職では「見直し・改定する必要がある」と答えた人が29.3%だったが、管理職のそれは52.4%と、約半数が「必要がある」と考えていた。
管理職によるテレワークでの人材育成やマネジメントについて、あしたのチームは、
「部下の状況・状態を把握し、すぐに対応することが重要だが、テレワークでは相手の都合のよいタイミングを見計らって声をかけることが難しくなる。テレワークで若手社員を支えるマネジメントを実現するためには、部下からの気軽な相談を受けやすくなるよう、若手社員が好むチャットやSNSを活用するのもよいかもしれない」
と指摘した。
なお調査は、2021年4月23日~26日に、全国の従業員数5人以上の企業に勤める正社員で、20年3月~21年3月の1年間に平均週2日以上テレワークに取り組んだ一般社員と、同じ期間に自身が平均週2日以上テレワークしたか、同頻度でテレワークした部下を持つ管理職の20~59歳の男女を対象に実施。300人(一般社員150人、管理職150人)から有効回答を得た。