コロナ禍後に増える!? 非正規雇用者
短大女子の就職率はリーマンショック前の2008年3月卒で94.6%、専修学校は93.7%で、この水準に回復するまでに、短大女子、専修学校とも5年かかっている。
このように、コロナ禍により悪化した就職率も、21年3月卒だけではなく、来年以降にも影響を与える可能性がある。
また、就職率はあくまでも「就職希望者」に対する就職者の割合を示すものだ。たとえば、リーマンショックの影響が就職率に最も大きく現れた11年3月の大卒の場合、就職希望者数37万1000人に対して33万7000人が就職したため、就職率は91.0%となった。
しかし、実際の11年3月の大学卒業生は55万5000人なので、就職者数の33万7000人は、卒業生全体の60.7%でしかない。これが実際の就職率だ。
今回の2021年3月卒では、大学生の就職希望率は76.0%と前年より0.1%ポイント低下した。男子大学生では70.6%で同0.6ポイント、女子大学生では83.4%で1.6ポイント低下した。また、短大女子では78.7%で5.0ポイント、専修学校では87.1%で1.3ポイント低下した。
さまざまな理由により就職希望率は低下するが、その中でも景気の悪化などにより、企業の採用状況が悪化することで、就職を諦める動きが出ることも確かで、2021年3月卒の場合には、それが顕著に出ている。
人の生活、人生を決める大きな要素の一つでもある「就職」が、経済動向や新型コロナウイルスのような災厄によって左右され、たまたま同じ時期に就職期を迎えた新卒者のその後の人生に大きな影響を与えるのは、何とも割り切れない。
リーマンショック後には、就職の悪化とその後の就職率回復の遅れにより、非正規雇用者の増加につながった。コロナ禍による就職率の悪化が、新たな非正規雇用者の増加につながることのないように、政府は十分な対策を進めるべきだ。(鷲尾香一)