生活保護よりはベーシックインカム
なぜ、ベーシックインカム(BI)が必要なのか。これはコロナ禍の前から議論されてきた。AIとロボットの普及によって多くの労働者が職に就けないとか、十分な収入が得られない事態が発生することが予測される。生活保護は救済に値する者としない者を選り分ける選別的な社会保障制度で、生活保護の対象者が劇的に増大するAI時代には十分機能しない恐れがある。このため普遍主義的なBIの必要性が浮上してきたのだ。
オランダではいくつかの都市で試験的に導入され、カナダやインド、フィンランドなどで実験が行われてきた。
BIには以下の3つのタイプがあるという。
・代替型(ネオリベ型) 既存の社会保障制度を全廃する
・中間型(取捨選択型) 社会保障制度のある部分は残して、それ以外は廃止する
・追加型(反ネオリベ型) 既存の社会保障制度をすべて残す
BIに対して、「なぜお金持ちにも支援するのか? 必要ないじゃないか?」という批判もあるが、それは設計次第であって、お金持ちに支援どころか負担を課すこともできるという。「結局、増税するのであれば、最初からその差額だけをやり取りすればいいじゃないか?」という指摘もあり得るとし、その差額のやり取りだけを行うのが、フリードマンが提唱した「負の所得税」である。
財源問題という見せかけの問題の奥にある真の問題は、高所得者の純負担が容認されるか否かである、と指摘している。
昨年、竹中平蔵氏がBI導入に言及したところ、既存の社会保障制度を全廃する代替型と見なされ、大きな反発を買った。しかし、本書を読み、BIにもいくつかのタイプがあり、井上さんのように中間型や追加型を主張する学者が多いことも知った。
むしろ、生活保護には大きな欠陥があり、本当に困窮している人を救済できない現実があり、BIの導入に必然性があるように思えたのは、コロナ禍での「特別定額給付金」を体験したせいかもしれない。