「何が何でも東京五輪・パラリンピックはやる!」
2021年7月23日の開幕まで残り60日余に迫った5月21日、IOC(国際オリンピック委員会)とIPC(国際パラリンピック委員会)、日本政府、東京都、大会組織委員会の5者会議が開かれ、緊急事態宣言下でもやることが改めて確認された。
しかし、五輪中止を求める包囲網がますます激しくなっている。強硬派と中止派のバトルはいつ終わるのか――。
企業のアンケートでも7割が「五輪反対」
五輪中止を求める世論の怒りが強まっている。朝日新聞が5月17日に発表した世論調査(5月15、16日実施)では、東京五輪を「中止」(43%)と「再び延期」(40%)の合計が83%にのぼり、前月の調査から14ポイントも増えた。「開催」はわずか14%。4月は27%だったから半減したわけだ。
同じく5月17日に発表されたテレビ朝日・朝日放送系のANNの世論調査(5月15日、16日実施)でも、「中止」と「延期」の合計が82%、「開催」はわずか15%にとどまっている。
注目されるのは、企業に対する意識調査でも中止・延期を求める声が7割以上に達することだ。菅義偉政権は東京五輪開催の目的の一つに「経済効果」を掲げていたはずだが、当の企業がそっぽを向いているのだ。
ロイター通信(5月21日付)「5月ロイター企業調査:東京五輪は中止・再延期が約7割、経済効果・損失とも限定的」が、こう伝える。
「5月のロイター企業調査によると、開催まで2か月となった東京五輪・パラリンピックについて『中止』(37%)、『再延期』(32%)と反対が69%となり、『開催』(30%)を大きく上回った。新型コロナウイルスの感染が急拡大するなか、海外からの無観客が決まるなど景気の押し上げ効果は乏しく、中止の際の経済損失も限定的との見方が大半だ。調査期間は5月6日から17日まで。発送社数は482社、回答社数は229社だった」
2020年11月には68%あった開催支持は、ついに30%にまで低下した。その理由として各企業は、こう答えている。
「ずうっと開催を望んできたが、ここまで封じ込めができていない現状から中止の英断が必要。開催した場合の感染等の反動は恐ろしい」(窯業)
「参加できない国が増加すると想定される」(小売り)
また開催された場合でも、何らかの景気押し上げ効果を見込む企業は4割にとどまった。一方で、
「今開催しても人の出入りは限定されるため、当初の経済効果は期待できない」(輸送用機器)
などと、押し上げ効果は限定的にとどまるとの見方が過半数を占めた。
さらには、中止になった場合でも「損失はそれほどでもない」とする見方が全体で72%もあったのだった。
元柔道世界一の山口香JOC理事「意義がない」
医師会からも「医療崩壊を招く」として強く反対する声が出始めた。朝日新聞(5月20日付)「五輪開催『厳しい』大阪府医師会長 月末の宣言解除も」が、こう伝える。
「大阪府医師会の茂松茂人会長が5月20日、朝日新聞の取材に応じ、府内の緊急事態宣言の期限の31日での解除は難しいという見方を示した。東京五輪・パラリンピックについても、『厳しいと言わざるを得ない』と中止に言及した。茂松会長は、『入院患者は減っていない。自宅療養、入院調整中の患者が1万人もいる』と話した」
そして、東京五輪について茂松茂人会長は、
「無観客開催でも選手やスタッフら多くの人が来日する。毎日PCR検査を選手にすると、本当に日本に必要なPCRができるのか危惧する。感染症を担当する医師に負担がかかる。医療側としてはみんな中止を念頭に置いていると思う。今、感染症を乗り越えたという段階ではない。そういう中でやることが本当にいいことなのか」
と疑問を呈したのだった。
元五輪選手で、主催者側のJOC(日本オリンピック委員会)理事の山口香・筑波大学教授も開催反対を訴えた。共同通信(5月19日付)「五輪開催『意義ない』と山口香氏 JOC理事、可否判断に憂慮」がこう伝える。
「JOCの山口香理事(56)が共同通信の取材に応じ、開催に否定的な世論が強い東京五輪について『国民の多くが疑義を感じているのに、国際オリンピック委員会(IOC)も日本政府も大会組織委も声を聞く気がない。平和構築の基本は対話であり、それを拒否する五輪に意義はない』と厳しい意見を展開した。柔道の元世界女王でもある山口氏は、これまでもコロナ禍で大会を開催する理由の説明や議論が不足していることに批判的な姿勢を取ってきた。開催可否の判断については『もう時機を逸した。やめることすらできない状況に追い込まれている』と憂慮した」