尾身会長に続け?! あのバッハ会長を動揺させた日本医師組合の「ぶち切れ」五輪中止要請(井津川倫子)

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   今夏の東京五輪・パラリンピックの開催をめぐる海外メディアのトーンが少しずつ変わってきました。

   先日、IOC(国際オリンピック委員会)の会見に、記者を装った男性が乱入して「五輪はいらない!」と叫ぶ映像が全世界に流れましたが、その影響もあるのでしょうか? 東京五輪をめぐる報道に「Tokyo Cancel(東京五輪キャンセル)」の文字が目立つように......。

   さらに、五輪中止を求めた日本医師団の「ぶち切れ」要請にメディアが敏感に反応し、とうとうあのIOCのバッハ会長を動かす事態となっています。

  • 日本医師組合の五輪中止の「ぶち切れ」要請にバッハ会長が動揺した!
    日本医師組合の五輪中止の「ぶち切れ」要請にバッハ会長が動揺した!
  • 日本医師組合の五輪中止の「ぶち切れ」要請にバッハ会長が動揺した!

米メディアは「バカげている!」

   2021年7月に予定されている東京五輪・パラリンピックの開幕まで2か月余り。新型コロナウイルスの感染状況は一向に収まる気配がなく、頼みの綱のワクチン接種は遅々として進んでいません。

   「こんな状況でオリンピックなんて開催できるのか!」といった国民の不安な気持ちを逆なでするように、開催に向けて頑ななスタンスを崩さないIOCや日本政府。

   ところが、五輪関係者が「強硬姿勢」を貫けば貫くほど、世論の支持を失っていくのでしょう。ここにきて、堂々と東京五輪開催に疑問を呈したり、反対したりする報道が増えてきました。

'A ridiculous idea' Japan growing anxious ahead of controversial Tokyo Olympics
(「バカげた考えだ!」物議をかもしている東京五輪を前に、日本では不安が広がっている:米USA TODAY)

   USA TODAYは記事の中で、8年前に五輪開催が決まった時は日本国中が興奮に包まれていたが、現在は「8年前の興奮が不安に取って代わられたようだ」と、日本国内に渦巻く不安の声や、大多数が中止を求めている世論調査の結果などを紹介しています。

Should the Olympics play on in a pandemic?
(パンデミックの最中にオリンピックを開催すべきか?:米デジタルメディアVOX)

   VOXは、「The realities of the pandemic are now crashing up against the Summer Olympics schedule」(パンデミックの現実が、夏の五輪スケジュールをぶち壊している)と述べて、感染者数や重傷者数が高止まりをしている日本や世界の状況を考えると、パンデミックの最中に五輪を強行することは現実的ではない、と批判しています。

   さらに、「So why risk it now?」(なぜ、今リスクを冒すのか?)と、コロナ禍での五輪開催を「リスク」だと警告する米大学教授のコメントや、「菅首相は五輪に政治生命がかかっている。だから中止しない」との分析を紹介するなど、なかなか読み応えのある記事でした。

日本医師組合の「ぶち切れ」要請にバッハ会長が動揺?

   なかには、さらに一歩踏み込んで、「五輪中止」の可能性や世界に与える影響について報じるメディアも出てきました。

What could happen if the Tokyo Olympics get canceled?
(東京五輪がキャンセルされたら、どんな影響が生じるのか?米CNNテレビ)

Who has the power to cancel the Tokyo Olympics?
(誰が、東京五輪をキャンセルできるのか?:ヤフースポーツ)

   こういったメディアの流れを変えたのは、日本の医師組合などが相次いで東京五輪・パラリンピック開催の中止を、政府に求めたことでした。「全国医師ユニオン」「東京保険医協会」といった、医療現場の最前線で新型コロナウイルスと戦う医師組織が立て続けに「悲鳴」をあげたことで、やっと日本の現状が伝わったのでしょうか。世界中に波紋が広がりました。

'Stretched thin': Tokyo medicos plead with organisers to cancel Games
(もう、くたくただ! 東京の医者たちが関係者に東京五輪中止を嘆願した:AP通信)

   「stretched thin」は、直訳すると「薄くストレッチされる」「薄く伸ばされる」で、「くたくたになる」「精神的に参る」「張り詰める」という意味で使われます。「(くたくたになって)ぶち切れる」というニュアンスもあるようですが、医師や看護師たちの心の叫びが伝わってきます。

   AP通信が発信したこの記事は、あまりにも「stretched thin」のインパクトが強かったのでしょうか。各国のメディアに転載されて、世界中に広がっています。先日の、政府分科会の尾身茂会長の「五輪について議論すべき」発言の時もそうでしたが、感情よりも科学的見地や事実を重んじる海外の人たちは、専門家の発言に敏感に反応するからです。

   それでは、「今週のニュースな英語」は、この「stretched thin」を使った表現を紹介しましょう。

My nerves are stretched thin
(私の神経は張り詰めている)

We're stretched thin
(私たちは、もういっぱいいっぱいだよ)

I'm stretched a little thin today
(今日は、ちょっとキャパオーバーです)

She was stretched too thin
(彼女は、働きすぎでくたくたになってしまった

   メディアの反応に動揺したのでしょうか。あのバッハ会長が突然、「東京五輪に医師団を派遣する」と表明して関係者を驚かせました。さっそく海外メディアが、「日本の医師たちの要請がバッハ会長を動かした」と皮肉たっぷりに報じていますが、日本医師団の「ぶち切れ要請」は予想以上の効果があったようです。

(井津川倫子)

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井津川倫子(いつかわりんこ)
津田塾大学卒。日本企業に勤める現役サラリーウーマン。TOEIC(R)L&Rの最高スコア975点。海外駐在員として赴任したロンドンでは、イギリス式の英語学習法を体験。モットーは、「いくつになっても英語は上達できる」。英国BBC放送などの海外メディアから「使える英語」を拾うのが得意。教科書では学べないリアルな英語のおもしろさを伝えている。
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