日本医師組合の「ぶち切れ」要請にバッハ会長が動揺?
なかには、さらに一歩踏み込んで、「五輪中止」の可能性や世界に与える影響について報じるメディアも出てきました。
What could happen if the Tokyo Olympics get canceled?
(東京五輪がキャンセルされたら、どんな影響が生じるのか?米CNNテレビ)
Who has the power to cancel the Tokyo Olympics?
(誰が、東京五輪をキャンセルできるのか?:ヤフースポーツ)
こういったメディアの流れを変えたのは、日本の医師組合などが相次いで東京五輪・パラリンピック開催の中止を、政府に求めたことでした。「全国医師ユニオン」「東京保険医協会」といった、医療現場の最前線で新型コロナウイルスと戦う医師組織が立て続けに「悲鳴」をあげたことで、やっと日本の現状が伝わったのでしょうか。世界中に波紋が広がりました。
'Stretched thin': Tokyo medicos plead with organisers to cancel Games
(もう、くたくただ! 東京の医者たちが関係者に東京五輪中止を嘆願した:AP通信)
「stretched thin」は、直訳すると「薄くストレッチされる」「薄く伸ばされる」で、「くたくたになる」「精神的に参る」「張り詰める」という意味で使われます。「(くたくたになって)ぶち切れる」というニュアンスもあるようですが、医師や看護師たちの心の叫びが伝わってきます。
AP通信が発信したこの記事は、あまりにも「stretched thin」のインパクトが強かったのでしょうか。各国のメディアに転載されて、世界中に広がっています。先日の、政府分科会の尾身茂会長の「五輪について議論すべき」発言の時もそうでしたが、感情よりも科学的見地や事実を重んじる海外の人たちは、専門家の発言に敏感に反応するからです。
それでは、「今週のニュースな英語」は、この「stretched thin」を使った表現を紹介しましょう。
My nerves are stretched thin
(私の神経は張り詰めている)
We're stretched thin
(私たちは、もういっぱいいっぱいだよ)
I'm stretched a little thin today
(今日は、ちょっとキャパオーバーです)
She was stretched too thin
(彼女は、働きすぎでくたくたになってしまった
メディアの反応に動揺したのでしょうか。あのバッハ会長が突然、「東京五輪に医師団を派遣する」と表明して関係者を驚かせました。さっそく海外メディアが、「日本の医師たちの要請がバッハ会長を動かした」と皮肉たっぷりに報じていますが、日本医師団の「ぶち切れ要請」は予想以上の効果があったようです。
(井津川倫子)