GDPが戦後最悪の落ち込み! どうなるニッポン経済? シンクタンク予想を読み解く(1)

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   2021年1~3月期の国内総生産(GDP)が年率にして前期比5.1%減となり、3四半期ぶりのマイナス成長となった。20年度の実質GDPも前年度比4.6%減と戦後最悪の落ち込みとなった。

   新型コロナウイルスの再拡大によって日本経済が急減速している姿が浮き彫りになった。

   いったい、日本はどうなるのか。国内の主要経済シンクタンクの緊急リポートを読み解くと――。

  • 景気回復はどうなる!?
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ワクチン接種の遅れで景気の「三番底」に

「3度目の緊急事態宣言がさらに延長されたら、日本経済は異例の深い『三番底』の陥る」

   そう警鐘を鳴らすのは、野村総合研究所のエグゼクティブ・エコノミスト の木内登英氏だ。

   「国内景気は『二番底』から異例の『三番底』へ」(5月19日付)の中で、木内氏は景気の「二番底」は諸外国に比べて決して珍しくないが、「三番底」は異例だとして、こう説明する。

「2021年1~3月期の実質GDPは、前期比年率マイナス5.1%、20年度の実質GDP成長率がマイナス4.6%と、戦後では最大の落ち込み幅となった。20年4~6月期以来3四半期ぶりのマイナス成長となり、景気の『二番底』が確認された形だ。これは、新型コロナウイルスの感染拡大を受け、2回目の緊急事態宣言(1月8日~3月21日)のもと、飲食、旅行、アミューズメント関連など対人接触型サービスを中心に、個人消費が大きく落ち込んだことが大きい」

   しかし、ユーロ圏、英国、豪州などでも感染が再拡大、ロックダウン(都市封鎖)の再発令などを受けて、2021年1~3月期の実質GDP成長率は前期比でマイナスに振れた可能性が高い。だから、景気の「二番底」は決して日本に特有な現象とは言えないと、木内氏は指摘する。

「ところが、日本ではこの1~3月期にとどまらず、4~6月期の実質GDP成長率も連続してマイナスとなる可能性が十分にある点が重要だ。それは、感染の再拡大と4月25日以降の緊急事態宣言の影響による。4~6月期には、米国を中心に成長率が上振れる国が目立ってくる。ワクチン接種の拡大で経済活動の正常化が進むことによるものだ。その中で、日本はワクチン接種の遅れが、経済活動の正常化の遅れをもたらし、それが4~6月期の成長率の低さとして明確に表れてくるだろう。それは世界の中でも際立つものとなろう」

と警告するのだ。

ワクチン接種の遅れが景気の「三番底」を生む
ワクチン接種の遅れが景気の「三番底」を生む

   では、「三番底」はいつくるのか。

「現時点(5月19日)でみても、岐阜県と沖縄県が緊急事態宣言を政府に要請する動きを見せている。現状の9都道府県での宣言が5月31日まで続いた後に、全国を対象とする宣言が3週間続けられるケースを想定すると、4~6月期の実質GDP成長率を年率換算で13%程度押し下げる計算となる。その結果、4~6月期の実質GDP成長率は年率2ケタの大幅マイナスとなる可能性も出てくる。日本経済はより深い景気の『三番底』に陥るのだ」

となると、日本経済はいつ回復に向かうのだろうか。

   木内氏は、こう予測する。

「米国では実質GDPの水準がコロナショック前の水準を既に取り戻しつつあるなか、日本が他国と比べて顕著に遅れているのは、第1に日本経済の潜在成長率が低いこと、第2に環境変化に対する経済の適応力の低さによる。ワクチン接種の遅れから感染収束の時期がさらに後ずれすれば、日本の実質GDPがコロナショック前のピークを超える時期が、2023年10~12月期から2024年へと一段と先送りされる可能性が高まるだろう」

米国経済の復活が唯一の救いになるか?

   第一生命研究所の主席エコノミスト新家義貴氏も、野村総合研究所の木内登英氏と同様に、感染がさらに再拡大して4~6月期も停滞続く予測をする。「2021年1~3月期四半期別GDP速報 ~個人消費を主因に年率5.1%のマイナス成長。感染再拡大で4~6月期も停滞続く~」(5月18日付)の中で、3度目の緊急事態宣言の影響の大きさをこう指摘する。

「GDP統計で前期比年率マイナス5.1%という減少幅は、かなり大きな部類だ。3度目の緊急事態宣言では、酒類を提供する飲食店に加え、百貨店、ショッピングモールなどの大型商業施設等にも休業要請が出されたほか、イベントの無観客実施が要請されるなど、前回の緊急事態宣言と比較して経済活動制限の度合いが強い。悪影響が飲食・宿泊などに集中していた2度目宣言と比べると、影響の範囲が広い。輸出の好調さが下支えになるものの、消費の落ち込みが響く形で4~6月期のGDP成長率はゼロ近傍にとどまるとみる。感染状況次第では2四半期連続のマイナス成長となる可能性も十分ある。目先は停滞感の強い状態が続くだろう」

   ただ、新家義貴氏は今後の希望として、輸出の好調さに「活路」を見出している。

「輸出は前期比プラス2.3%と、3四半期連続で増加した。地域別では、米国向けが伸び悩んだ一方で、中国、NIES(編集部注:シンガポール、香港、台湾、韓国などの新興工業国)、ASEAN といったアジア向け輸出の好調が続いた。財別では、これまで輸出をけん引してきた自動車輸出に頭打ち感がみられたものの、世界的な半導体需要の増加や設備投資需要の盛り上がりを受け、電気機械や一般機械などが好調に推移し、輸出をけん引している」

   また、先行きについても、

「ワクチン普及による感染抑制の実現や経済対策効果によって、米国景気の加速が見込まれるなか、輸出は好調に推移する可能性が高い」

として、米国経済の復活が日本経済によい効果をもたらすだろうとみている。

(福田和郎)

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