GDPが戦後最悪の落ち込み! どうなるニッポン経済? シンクタンク予想を読み解く(2)

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   2021年1~3月期の国内総生産(GDP)が年率にして前期比5.1%減となり、3四半期ぶりのマイナス成長となった。20年度の実質GDPも前年度比4.6%減と戦後最悪の落ち込みとなった。

   新型コロナウイルスの再拡大によって日本経済が急減速している姿が浮き彫りになった。

   いったい、日本はどうなるのか。国内の主要経済シンクタンクの緊急リポートを読み解くと――。

  • 株価も上値が重く……(写真はイメージ)
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3度目の緊急事態宣言も巣ごもり需要は拡大

   一方、ニッセイ基礎研究所経済調査部長の斎藤太郎氏は、日本国内のワクチン接種の進展を期待し、「2021年4~6月期の実質GDPは、前期比年率1%程度のプラス成長になる」と、比較的楽観的な予測をしている。「QE速報:1~3月期の実質GDPは前期比年率マイナス5.1% ~緊急事態宣言の影響で3四半期ぶりのマイナス成長~」(5月18日付)の中で、まず3度目の緊急事態宣言の影響の大きさを、こう指摘した。

「最初は4都府県を対象に3度目の宣言が発令され、その後対象地域が9都道府県に拡大した。緊急事態宣言対象地域のGDPが日本全体に占める割合は、32%から50%まで高まったことが大きい。今回の緊急事態宣言は、酒類を提供する飲食店、百貨店の休業、テーマパーク・遊園地の休園など、経済活動の制限が前回の宣言時よりも厳しくなっているため、個人消費への悪影響は前回よりも大きくなることが予想される」

   しかし、底を打ったあとに反転がくるという。そのけん引となるのがワクチン接種の進展だというのだ。斎藤太郎氏はこう述べる。

「サービス消費は低迷が続くものの、すでに水準が大きく下がっているため、追加的な下押し圧力は限定的にとどまる公算が大きい。また、大規模商業施設の休業がマイナス要因となるものの、巣ごもり需要の拡大を背景に底堅い動きが続く。
現時点では、2021年4~6 期の実質GDPは、緊急事態宣言の影響を受けにくい設備投資、輸出が増加し、ワクチン接種の進捗などから政府消費(編集部注:国が行う公共事業の金額と、公務員を雇って国民に行政サービスを提供するための金額の合計)が増加に転じるなか、民間消費がほぼ横バイとなることから、前期比年率1%程度のプラス成長を予想している」

   ただし、大幅マイナスの後としては低い伸びにとどまる、と指摘している。

リモートワークの停滞が日本の命取り

   さて、「日本企業のリモートワークに関する対応の悪さが、米国より回復が遅れる理由となっている」と、意外な観点から分析しているが、ソニーファイナンシャルホールディングス金融市場調査部のシニアエコノミスト、宮嶋貴之氏だ。「日本の1~3月期GDP:米国より回復が遅れる一因はリモートワーク対応」(5月18日付)の中で、コロナ禍にあって、なぜ米国の景気回復が早いのに日本が遅れているのかと、比較分析している。

   そして注目したのが、ワクチン接種の進捗状況とともに、民間企業設備投資と民間住宅投資の項目でも著しく米国に遅れている点だった。いったいどういうことか。宮嶋貴之氏は、こう指摘する。

「ワクチン接種の遅れによって、景気回復力の差異が生じる項目として真っ先に思い浮かぶのは個人消費だが、消費以外にも回復力の差異が顕著な項目がある。設備投資と住宅投資だ。米国では両方ともコロナ危機前を超える水準まで回復した。
テレワークの遅れが日米格差につながっている
テレワークの遅れが日米格差につながっている
一方、日本は両方とも低迷が続く。コロナ危機のような経済ショックに直面すると、日本企業は慎重姿勢を強めて設備投資を抑制し、その結果、特に環境変化への適応に向けた投資が遅れる。その顕著な例がリモートワーク対応だ」

   米国企業は、危機に際して積極果敢に新しい改革に取り組むのに、日本企業は嵐が去るまで首をすくめるというわけだ。その典型的な例がリモートワークというわけだ。Google社の職場モビリティデータ(従業員の移動記録)を日米で比較すると、米国のほうが日本よりもリモートワーク率が2倍以上高かった。

   宮嶋貴之氏は、こう説明する

「米国ではコロナ危機によって日本よりもリモートワークが定着した。米国では感染の急拡大を受けてリモートワーク環境の整備が進み、企業はノートPCや通信設備、社内システムに投資をし、家計はリモートワークに適した住宅を購入した。これがGDP上では設備・住宅投資の押し上げとして反映される。アフターコロナにおいても企業の20%強、労働者の45%がリモートワークの継続を希望する結果が出ている。一方、日本は企業の慎重姿勢もあって、リモートワークの導入が進んでいない」

   このリモートワークの遅れが生産性向上の阻害要因となり、ますます設備投資が下押しされる悪循環に陥っている。そして、景気回復の遅れにつながっているというわけだ。

(福田和郎)

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