3万人の記者をどうやってコントロールする?
もう一つの大問題が、約3万人とみられる海外からの報道陣だ。政府や組織委は報道陣にも厳しい行動制限を課し、違反すれば「国外退去」を命じるとしているが、記者たちが宿泊先と競技場の往復だけの「缶詰状態」に従うかどうか、疑問視する声が多い。
そんななか、記者たちへの「国外退去」命令は法的根拠が薄いのではないかと指摘したのが東京新聞(5月18日付)「五輪海外メディア『国外退去』は可能? 感染防止、規則違反なら」だ。こう伝える。
「菅義偉首相は記者会見で、海外メディア関係者が新型コロナ感染防止のための行動制限に違反した場合に『強制的に退去を命じることも検討している』と明らかにした。命令の根拠をファクトチェックすると、実効性への疑問が浮かび上がる」
としてこう指摘する。
「首相の言う『強制退去』とは、入管難民法に基づく不正入国者への国外退去命令だ。不正を判断する材料の一つが、政府が新型コロナの水際対策として入国者に提出を求める誓約書だ。東京大会に訪れるメディア関係者向けには、組織委員会が公表した規則集で、滞在場所や移動方法を記した計画書の提出や、市民との接触を最小限にすることを求めている。メディア関係者はこうした規則集の順守を入国時に誓約する見通しだ。誓約に反した場合、政府は退去強制手続きの対象となる可能性があるとしている」
ところが、現在も入国する外国人に対してこうした誓約書を取っているが、全然守られておらず、退去強制手続きも行われていない状態だというのだ。東京新聞がこう結んでいる。
「厚生労働省などによれば、入国者が誓約を守らず、1日当たり数百人の待機場所が確認できないケースが相次ぐ。違反者に強制退去を行った例はない」
1日数百人でもこのありさまだ。数万人が入ってくるのだ。どうやって「国外退去」させるのだろうか。
(福田和郎)