「日本のセキュリティは大丈夫?」ワクチン接種お粗末すぎるミス 岸防衛相が朝日と毎日に八つ当たり(2)

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   東京23区と大阪市の住民を対象とした新型コロナウイルスワクチンの高齢者向け大規模集団接種のウェブ予約が、2021年5月17日から始まった。防衛省が自衛隊を大々的に動員した菅義偉内閣の一大プロジェクトだ。

   ところが、朝日新聞出版と毎日新聞の記者が、実際の接種券に記載していない架空の数字を入力しても予約をできることを暴露。さあ、怒ったのは岸信夫防衛大臣だ。システムの欠陥を反省するどころか、「悪質な行為だ!」と両社に抗議するありさま。

   ネット上では、

「こんなにセキュリティのいい加減な人物が防衛大臣をやっていて、大丈夫かニッポン?」

   と、呆れる声が殺到している。

  • 7月末までの全高齢者ワクチン接種の公約が難しくなった菅義偉首相
    7月末までの全高齢者ワクチン接種の公約が難しくなった菅義偉首相
  • 7月末までの全高齢者ワクチン接種の公約が難しくなった菅義偉首相

官邸の「鶴の一声」で始まった突貫工事の付け焼刃

   そもそも、防衛省による新型コロナウイルスワクチンの大規模集団接種のウェブ予約システムが突貫工事の付け焼刃だったことは、多くのメディアがそろって指摘する。

   河野太郎ワクチン担当大臣とは別ルートでのワクチン接種を強行したため、最初から自治体のシステムと連携できていなかった。そのため「二重予約」「三重予約」が多発することは政府も認めていたのだ。

   たとえば、朝日新聞(5月18日付)「大規模接種へ突貫工事、二重予約把握できぬシステム 『官邸案件』自衛隊を投入」がこう伝える。

「東京会場を視察した中山泰秀防衛副大臣は自衛隊医官らを前に『自衛隊の歴史が始まって以来、初めてのオペレーションに臨むことになる』と語った。そんな史上初の活動は『首相官邸の鶴の一声』(防衛省幹部)で動き始めた。菅義偉首相が4月27日、岸信夫防衛相に対し、自衛隊が主体となって大規模接種センターを運営するよう指示した」

   菅首相が岸防衛相に指示してから、わずか3週間で始めたわけだ。7月末までに高齢者の接種を終わらせるという政権の「公約」を実行させるための窮余の一策だ。

   背景には、ワクチン接種の遅れが東京五輪の開催を難しくするうえ、内閣の支持率急降下につながり、政権の命取りになることがあった。

   官邸幹部は、朝日新聞記者の取材に、

「6月末までに相当打てれば、世の中の雰囲気も変わっていくだろう」

   と、風当たりが弱まるという期待もあった。

   しかし、朝日新聞はこう結んでいる。

「ただ、東京と大阪の両会場を合わせても、接種ができる能力は1日最大で1万5000人。首相が掲げた『1日100万回』のわずか1.5%だ。官邸幹部は『大規模接種では数は稼げない』とため息をつく」

   そこに今回、システムの恥ずかしいくらいの欠陥が明らかになり、修正を余儀なくされた。「7月末までの高齢者全員接種」の公約は、ますます遠ざかった。

何事も急いで焦り、ミスを頻発する菅内閣の特徴

   ネット上にはこんな批判の声があふれている。

   東洋大学ライフデザイン学部・准教授の高野龍昭氏は、こう指摘する。

「この問題の核心は、府省間の縦割り、政府と自治体間の縦割りです。ワクチン接種に関する接種券番号のデータや住民の生年月日など基礎データを把握しているのは市区町村だけで、政府(府省)は把握していないはずです。また、それは厚生労働省を中心とした命令系統で自治体が動いていますが、大規模接種会場の運営を担う防衛省は当然にそれらのデータは持ち得ていません。だから架空情報で予約ができてしまう。もちろん予約システムの技術的な問題もあります。こうした問題は今に始まったことではなく、医療・介護分野を中心に20年ほど前から顕在化していました。そのツケが今回のワクチン接種で露呈した形と言えます」
ワクチン接種がどこまで進むか(写真はイメージ)
ワクチン接種がどこまで進むか(写真はイメージ)

   ほかにもこんな指摘の声が多い。

「システムエンジニアの立場から言わせてもらうと、正式リリース前にきちんと動作確認しなかったのが悪い。あるいは、仕様をしっかり詰められなかったのが問題。メディアに問題点を突かれたことを責めるのは筋違い。むしろ、気づかせてくれたことにお礼を言うべきところ」
「本気で悪意を持ったハッカー、たとえば海外からのサイバー攻撃によって架空情報で登録されまくったら接種業務が壊れてしまいます。こんな状態でリリースした側に問題があります」
「チケットぴあ、ローソンチケット、セブンや楽天チケットだとか、取扱量が多くてみんなが知って利用する会社が日本にいっぱいある。地域の花火大会のチケットだって扱っているよ。そういうところをなぜ使わなかったのでしょうか? インフラだって整っているのに。総理のお友達が関係している会社だからでしょうか?」
「『架空情報を使い予約した朝日新聞出版と毎日新聞に対して、悪質な行為であり、極めて遺憾だ、厳重に抗議する!』...。とても日本のセキュリティの責任者である防衛大臣のお言葉とも思えません。システムはね、こうしたことを考慮して構築するのが当たり前なのです。ザル設計したほうに責任がある。警鐘を鳴らしてくれた両社の記者に感謝をしなくては。連日日本の有事対応力の低さを証明する事案ばかり起きて、これじゃ、どこかの国が沖縄辺りまでなら獲れそうだとか、本気で動き出すのではないかと心配」

   最後にこんな心配の声を紹介したい。

「何事も焦って急いでやり、ミスを頻発する菅内閣の特徴だな。行き当たりバッタリの科学的知見のなさを、根拠なきスピード感と物量作戦と恫喝で補おうとする稚拙なやり方。オリンピックも開幕まであとわずか60数日。解決すべき課題が山積み。ずさんなまま突き進んで、大きな惨事を引き起こさないでほしい」

(福田和郎)

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