東京オリンピックの開催まで残り70日を切ったが、新型コロナウイルスの感染拡大が一向に収まらないばかりか、2021年5月14日、新たに緊急事態宣言に北海道と岡山県、広島県が追加される事態となった。
そんななか、各地の知事たちに燎原の火のように反乱が広がっている。また政府の足元でも、「追認機関」だった分科会が初めて反旗を翻した。
いよいよ感染症の専門家たちも「良心」に従って、東京五輪に真正面から向き合うようになってくれたか。
政府の「追従機関」分科会がついに爆発した!
国内で中止を模索する政治の動きも進行している。毎日新聞(5月12日付)「二階、小池会談が波紋 五輪開催めぐり自民に広がる臆測」が政界の大立者、二階俊博・自民党幹事長と小池百合子都知事の密会について、こう推測している。
「東京五輪の開催可否への関心が高まるなか、自民党の二階俊博幹事長と東京都の小池百合子知事が5月11日に会談したことが、自民党内に波紋を広げている。7月に都議選を控えて『開催中止の相談をしたのでは?』と疑心暗鬼の声も飛び交い、異様な雰囲気だ。二階氏と会談した小池氏は、ワクチン接種の加速化などが議題だったと記者団に説明。五輪については『それはありません』とかわした。しかし小池氏の言葉を額面通りに受け止めた自民議員は多くはない」
毎日新聞はこう続ける。
「二階氏は、4月の民放番組で『(新型コロナの状況で無理だと分かったら)スパッとやめなきゃいけない』と発言。その後、5月10日の記者会見で『慎重な判断が必要だ』とトーンダウンしたことも、『開催中止が現実味を帯びてきたからではないか』と憶測を広げた。閣僚経験者は二階氏と小池氏の良好な関係を念頭に『小池氏が中止を打ち出して、世論受けのパフォーマンスを狙う可能性がある』と警戒する。自民党幹部は『五輪開催が政局になっている。それには最もなじまないスポーツの祭典のはずだ』と党内をけん制した」
そんななか、これまで菅政権の新型コロナウイルス対策の「追従機関」と揶揄されてきた、政府の基本的対処方針分科会(尾身茂会長)が5月14日、反旗を翻した。
政府の諮問に初めて反対し、緊急事態宣言について、北海道、岡山、広島の3道県を追加させたのだ。これが、いかに異例で驚くべきことか、 政治評論家の田崎史郎氏が14日放送のTBS系「ひるおび!」で、こう解説したのだ。
「分科会の、政府への反発が爆発してひっくり返ったのですね。今朝7時から分科会をやって、西村康稔担当大臣が諮問した内容は5つの県にまん延防止を適用しますよという話だったけど、結論は違った。政府がいったん決めた方針が分科会でひっくり返るというのは初めてですよ。国の諮問機関に広げて考えても、政府が諮問したことが審議会で覆されるのは極めて異例です」
そして、田崎氏が取材した内容をこう語った。
「西村大臣が『5つの県に』と言った途端、専門家の方々からワーッと反発が出て、『なぜ、北海道に緊急事態宣言を適用しないのだ!』と。それで閣議が行われて(政府が)方針転換したと。尾身茂会長は最初の諮問案でまとめようとしたけど、分科会で反発が強まってひっくり返った。(これまで)かたくなに専門家の意見を退けてきた経緯があって、分科会の反発が爆発したということです」
「最悪のことも考慮してやるのは当たり前」と尾身会長
その尾身茂会長、抑えが利かなくなった分科会の専門家たちの怒りを背に受けたのだろうか、その後の国会審議でこれまでにない激しい言葉で、事実上の東京五輪中止を訴えたのだった。
フジテレビ(5月14日)「尾身会長『最悪の状況も考慮』東京五輪・パラ開催判断」が、こう伝える。
「尾身会長は、東京五輪の開催の判断には、最悪の状況も考慮する必要があるとの考えを示した。尾身会長は『(五輪の開催時に)どういう負荷が医療にかかるのか、最悪のことも考慮してやるのは当たり前だと思います。仮に緊急事態宣言が出ている状況で東京大会を開催するとした場合、現在の大阪のように、一般医療に支障が出ている状況に、大会開催による医療への負荷が加わることになる。それがどのくらいなのかを評価する必要がある。関係者は、それらをふまえて最終的な判断を下すべきだ』とした」
ようやく政府のコロナ対策の専門家グループが、感染症の専門家の良心を取り戻し、忖度ナシで東京五輪と向き合う態勢ができたということか。遅すぎるが......。
(福田和郎)