米陸上チーム「危険な日本」の合宿中止の衝撃
そんななか、衝撃的なニュースが飛び込んで来た。米国の陸上チームが、コロナ状況が危険だとして、五輪前の日本での合宿を中止すると通告してきたのだ。昨年の東京五輪延期も米国の選手団、とりわけ陸上チームの危機感がきっかけだった。スポーツ報知(5月12日付)「米国陸連が千葉での事前キャンプ中止『安全面に懸念』と通達」が、こう伝える。
「東京五輪の米国陸上チームが千葉県内で実施予定だった事前合宿を中止することがわかった。千葉県が12日、発表した。米国陸連から中止の連絡があり、『新型コロナの世界的流行が続き、今後も収束の見通しが立たない中で、選手の安全面に懸念が生じているため』との理由が伝えられた。事前合宿は7月上旬~8月上旬を予定。成田市や佐倉市、印西市の運動施設を使うことになっており、準備が進められていた。千葉県の熊谷俊人知事は『中止は残念だが、米国陸連が現在の状況下での最善策として判断したものと考えている』とのコメントを出した」
スポーツ報知はこう続ける。
「各国チームの事前合宿のキャンセルは各地で相次いでいるが、米国の陸上チームは五輪の花形でもあり、その動向の影響力は大きい。『選手の安全面への懸念』が簡単になくなる保証はなく、今後さらに大会への悲観論が加速する可能性もある」
米国選手団の不安の背景には、海外メディアの相次ぐ「東京五輪中止論」が影響している可能性がある。
共同通信(5月13日付)「仏紙1面に『東京五輪はKOか』日本政府のコロナ対策批判」によると、5月13日付のフランスの有力紙リベラシオンが、1面トップに「東京五輪はKO(ノックアウト)か?」という見出しを掲げ、日本国内で中止を求める世論が高まっていることを伝えた=上の写真参照。社説でも日本政府のウイルス対策を「緩い」と指摘。東京都立川市の病院が「五輪やめて」とのメッセージを窓に張りだしたことなどを紹介。「日本政府当局は、ウイルス検査の拡大も、ワクチンに飛びつくことも、病院の体制強化も、必要な財政支援も、1年以上どれもせずにウイルス流行を放置した」と痛烈に批判した。
デイリースポーツ(5月12日付)「NYT紙が東京五輪中止求める寄稿掲載『茶番やめるべき』 著者『いい加減にしろ』」によると、米有力紙ニューヨーク・タイムズが5月11日、「スポーツイベントはスーパー・スプレッダー(感染を猛拡大させる者)イベントであってはならない。五輪は中止だ」と題した政治学者ジュールズ・ボイコフ氏のエッセイを掲載した=左の写真参照。ボイコフ氏は新型コロナ禍での五輪開催で感染が急拡大する危険性を指摘。強行に突き進む理由について「3つある。金、金、そして金だ」と、主催者を皮肉った。
(福田和郎)