全日本空輸(ANA)を傘下に置くANAホールディングス(HD)、日本航空(JAL)の2大エアラインの2021年3月期決算は、そろって空前の赤字を記録した。
新型コロナウイルスの世界的な感染拡大で最もダメージを被った業種の一つだけに、厳しい結果になったが、22年3月期は旅客が戻ることなどを見込んで黒字転換も目論む。多くの従業員を他社に出向させるなどして固定費の削減に努める非常事態の下、需要回復の前提が崩れる恐れもあり、薄氷を踏むような厳しい状況が続く。
JAL、再上場後で初の赤字
ANAホールディングス(HD)と日本航空(JAL)、両社の21年3月期連結決算をみてみよう。
ANAHDが4月30日に発表した2021年3月期決算は、売上高が前期比63.1%減の7286億円、最終(当期)損益は4046億円の赤字(前期は276億円の黒字)と、過去最大の赤字だった。
コロナ禍にあって、海外の渡航規制や国内の緊急事態宣言などで、国際線の座席利用率は19.6%、国内線は43%と採算ラインの6割を大幅に割り込んだ。旅客数は、国際線が95.5%減と需要の「蒸発」といえる状況になり、国内も70.5%減った。
旅客収入は国際線92.7%減の447億円、国内線70.1%減の2031億円。機材整備費や人件費など約5900億円のコスト削減に努めたが、追いつかなかった。
JAL(5月7日発表)は、売上高が前期比65.3%減の4812億円、最終損益は2866億円の赤字(前期は480億円の黒字)と、2012年の再上場後で初の赤字になった。旅客数は、国際線96.0%減、国内66.5%減、旅客収入は国際線94.3%減の279億円、国内線67.2%減の1740億円と、ANAと同様の落ち込みになった。
このように、厳しい結果ではあるが、一時よりは復調しているのは事実。ANAHDは20年10月時点で5100億円の赤字、JALも21年2月時点で3000億円の赤字と予想しており、それぞれ1050億円、130億円、赤字幅が縮小している。