町長「私は病院長のようなもので医療従事者」
この中でも、とりわけメディアの注目を集めたのが、茨城県城里町の上遠野(かとうの)修町長(42)だった。記者会見で、「いったい何が悪い。どこに文句がある」とばかりに記者団をにらみつける対応がテレビに流れ、いかにも「上級国民」という印象を与えてしまった。
人口1万8000人の小さな町でありながら、東京大学経済学部卒、大林組や楽天社員を経て、初当選時は36歳という茨城県内では最年少の町長という輝かしい経歴もあって、記者会見でも「切れ者」という印象を与えた。
朝日新聞(5月13日)「町長『医療従事者に準じる』優先接種した首長の理屈」によると、上遠野町長はこう語った。
「町立の保健センターが接種会場になっています。保健センターが医療機関に変わり、私自身が保健センターの設置者であるため、実質的に私は病院長と同じような立場になります。だから、医療従事者に準ずるわけです。また、私は連日陣頭指揮にあたっています」
と強調したのだった。
こうした主張の動きについて、ほかの首長はどう思っているのか。日刊スポーツ(5月13日付)によると、大阪府の吉村洋文知事は、「自分から先に打つことはない」と、こう語った。
「首長だから早くというのは問題だと思う。ワクチンはみんなが求めているもので、限られた数の中で、医療従事者の方、高齢者の方とルールを作ってやっている。そのルールを逸脱するようなワクチンの接種はあってはならない。危機管理の総責任者で(首長の接種が)必要というのであれば、事前に市民に説明しなければいけない。説明した後に打つのであれば、いいと思う。そこを隠すのは権力を使った〈不正〉のように思う」
上遠野町長の「理屈」だと、公立施設で接種する限り、すべての首長は「実質的に病院長と同じ」で、医療従事者になってしまうが、どうなのか。
朝日新聞(5月14日付)「首長の『優先接種』賛否」によると、厚生労働省の見解はこうだ。
「町長は『医療従事者など』にあたるのか。範囲は、コロナ患者に頻繁に接する医師や病院職員のほか、保健所職員や接種会場の自治体職員ら。首長の記載はない。厚労省の担当者は『優先接種の考え方に照らせば、首長は一般的には医療従事者には当たらないのではないか』との見解だ」
つまり、職員は該当するが、首長はお門違いだというわけだ。