地元に就職を希望する大学生が5年ぶりに増加に転じたことが、株式会社マイナビの「2022年卒大学生Uターン・地元就職に関する調査」でわかった。2021年5月11日の発表。新型コロナウイルスの感染拡大の影響で就職活動のオンライン化が進んだことが背景にある。県境をまたいだ移動もなく採用選考に臨めるケースが増えたことで、生まれ故郷の地元企業を受けやすくなったことが考えられる。
ウェブ面接あれば志望度上がる
調査によると、「現時点で地元(Uターンを含む)就職を希望するか?」という質問に、57.8%の学生が「希望する」(「希望する」=31.3%と「どちらかというと希望する」=26.5%の合計)と答えた。
地元企業への就職希望は、2017年卒の学生を対象とした調査で、前年の63.8%から65.0%に増えて以降はゆるやかに減少していたが、5年ぶりに増加に転じた。前年(2021年卒対象)調査では54.9%だった。
また、マイナビは地元での就職を希望する22年卒の学生が、大学(大学院)に進学した際と就職活動中の現時点との差が大きいことにも注目。進学した際の「希望する」割合は50.9%で、現時点の57.8%とで6.9ポイントの開きがあった=下図参照。
進学時と4年(大学院2年生)進級時の「地元就職を希望する」割合の差は、21年卒が3.0ポイント(51.9%→54.9%)、2020年卒が3.2ポイント(56.0%→59.2%)など、近年は5.0ポイントを超えることはなかった。
22年卒の学生は、学生生活の後半を感染者が増えるなか、一人で過ごすことが多くなったり、コロナ禍で就活のオンライン化が定着したりした影響が大きいようだ。地元企業(Uターン先企業含む)がウェブ面接やウェブセミナーを実施している場合、その企業への志望度が上がるかを聞くと、「ウェブ面接を実施していると志望度が上がる」と答えた学生は、前年比5.9ポイント増の57.1%だった。ウェブセミナーで志望度が上がるという回答は18.5%だったが、前年より5.9ポイント増えた。
高まる地方志向、進む東京離れ
コロナ禍での就活オンライン化の促進は、別の面でも学生たちの関心を地元就職へ向けさせているようだ。調査で「地元企業への就職活動で障害だと感じていること」を聞いたところ、「交通費」と回答した割合が13.3%と前年(26.0%)からほぼ半減した。「コロナ禍で県をまたぐ移動の縮小、就職活動のオンライン化が進み、地元との往復にかかる交通費が大幅に減っていることが要因とみられる」と、マイナビは分析している。
また調査では、コロナ禍をきっかけにテレワークが注目されるようになり、ポストコロナの働き方の一つとして定着するとみられているが、働く場所が自由になった場合に、勤務先・居住地域の理想として当てはまるものを聞いた。
勤務先の理想で最も多かったのは「地方の企業に勤めたい」で、前年比1.0ポイント増の48.2%。居住地域の理想で最も多いのは「地方に住みたい」で同2.2ポイント増の57.0%だった。
一方で、「東京の企業に勤めたい」は同0.5ポイント減の19.7%、「東京に住みたい」は同2.4ポイント減の12.7%と、東京の勤務・居住を希望する割合は減少している。
マイナビは、
「コロナ禍でテレワークが進んだり、東京から地方へ本社を移す企業があったりと、働き方を取り巻く環境は変化しており、学生の就職意識にも影響を与えているようだ」
とみている。
「地元(Uターン含む)就職以外に、Iターン就職のように地元以外の自然が豊かな地方で働いてみたいと思うか」の問いには、前年比3.2ポイント増の43.2%が「働いてみたい」という意向を示した。
なお、調査は2022年3月卒業見込みの大学3年生と大学院1年生を対象に、21年3月18日から4月6日に実施。5910人から有効回答を得た。