EUがAI規制案、世界標準を狙う 市民の権利保護と企業への投資呼び込み促す

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世界各国のルールづくりにどう影響?

   ただし、きれいごとばかりではない。ベステアー氏は、「AIの信頼確立にむけ、EUは新たな世界の規範づくりを主導する」とも表明している。ベースに人権重視があるとはいえ、個人情報保護の国際的なルール形成に大きな影響を与えたEUの「一般データ保護規則(GDPR)」(2018年施行)の「成功体験」を踏まえ、世界各国の企業を拘束するAI規制のグローバルスタンダード(世界標準)を、EU主導で定めようという明確な意思表示でもある。

   新たな分野での「標準」の獲得は、競争力を左右する。世界から関連の投資を呼び込もうという狙いは明らかだ。

   他方、規制が強すぎれば関連企業に逃げられ、技術革新を阻害する懸念もある。EUが開発競争で先行する米中に後れを取る可能性も指摘される。

   今回の規制案について「厳しすぎる」(大手電機メーカー)といった声が関係業界からは早くも出ている。たとえば、前記(2)「高リスク」に分類される規制案では、第三者機関などの事前審査を経る必要があり、データの適切な使用、消費者への十分な説明などが求められることから、コスト増につながるとの警戒感がある。

   大きな方向として、国際的な共通ルール策定の議論が高まっていくのは確実。AIを活用している日立製作所、NEC、富士通などはAI利用について社内のガイドラインを設けるといった取り組みを始めている。EUのAI規制案が今後、日本を含む各国のルールづくりにどのような影響を与えるか、関係者は注視している。(ジャーナリスト 岸井雄作)

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