絶好調の米国株 どう読む! まだまだ上昇、それとも下落か?【投資の基本を知る その5】(小田切尚登)

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コロナ禍は本当に収束するのか?

   好調なのはハイテクにとどまらない。住宅が売れ、自動車が売れ、家具が売れる状況となっている。カネ余りの状況が続き、失業率も最低レベルとなった中で、消費者の財布が緩んでおり、それが実体経済の産業を活発にしているのだ。

   金融、エンタメ、旅行といった業種も伸び始めている。それを後押ししているのは、バイデン大統領による経済対策と、米連邦準備制度理事会(FRB)のゼロ金利政策である。

   もちろん問題点もある。一つは、株価があまりにも高くなったため、さすがに「バブル」なのでは、という懸念の声が出ていることだ。

   S&P500の500社のPEレシオ(株価を一株当たり利益で割った数字)は平均40倍を超えている。2010年からの10年間、PEレシオが20倍前後で推移したのに比べると、倍増しているわけだ。

   株価が40年分以上の利益を上回っている、というのは高すぎるという見方は当然あり得る。今はコロナ禍後の開放感が支配しており、「バブル」という言葉はそれほど聞かれないが、何らかのきっかけで株価が大きく下がり始める可能性は考えておく必要がある。

   実質的な問題点もいろいろある。インフレへの懸念、金利の上昇の可能性、借金が国のレベルでも企業のレベルでも大きく増えていること、原材料価格の高騰、賃金の上昇、バイデン政権に対する心配、コロナ禍が本当に収束するか、といったことだ。

   もう一つ最近の重要な問題は、バイデン米大統領が富裕層に対してのキャピタルゲイン課税(資産価格の上昇分にかかる税金)を大幅に強化することを発表したことだ。これには二つあって、一つは100万ドル以上の利益を得ている投資家については、現行の税率23.8%から39.6%に引き上げるというもの。これに連邦税が加わると43.4%となり、さらに州税も加算されると50%を超える場合も出てくる。

   もう一つは、プライベートエクイティなどの投資家が得た収入に対し、これまで最大で23.8%というキャピタルゲイン課税の税率を適用していたのを、通常の所得税の37%を徴収するというものだ。

   バイデン政権にしてみると、国内のインフラ整備に莫大なカネがかかるので、少しでも国民に、その中でも富裕層に負担してもらいたいと考えるのは当然だ。株式のキャピタルゲインは富裕層が利益を得ている割合が圧倒的に高いので、そこを狙い撃ちにした。あまりにも広がった貧富の差を叩くという政策的な意図も、そこにはある。

小田切 尚登(おだぎり・なおと)
小田切 尚登(おだぎり・なおと)
経済アナリスト
東京大学法学部卒業。バンク・オブ・アメリカ、BNPパリバなど大手外資系金融機関4社で勤務した後に独立。現在、明治大学大学院兼任講師(担当は金融論とコミュニケーション)。ハーン銀行(モンゴル)独立取締役。経済誌に定期的に寄稿するほか、CNBCやBloombergTVなどの海外メディアへの出演も多数。音楽スペースのシンフォニー・サロン(門前仲町)を主宰し、ピアニストとしても活躍する。1957年生まれ。
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