巨額賠償に基地局の使用差し止め どちらも死活問題の楽天モバイル
この訴訟が両社のみならず、モバイル業界で注目を集める背景には、日本企業同士の訴訟では異例ともいえる巨額の損害賠償請求額であると同時に、請求内容に「基地局の使用差し止め」が含まれていることがある。
後発の楽天モバイルはNTTドコモ、KDDI、ソフトバンクの大手3社に比べて通信エリアが狭く、利用者の獲得に苦戦している。現在は基地局などの多くをKDDIから借りているが、通信エリア拡大のため、基地局の整備など自主回線の増強に力を入れている最中だ。
この状況でソフトバンクの請求が認められ、基地局が使えない事態に追い込まれれば、コツコツと進めてきた自主回線整備の計画に支障が出かねない。文字どおりの死活問題といえるだろう。
楽天モバイルは自主回線の整備などの先行投資を利用者の拡大で穴埋めし、2023年の黒字化を目指しているが、訴訟の行方によっては戦略の根本的な見直しを迫られる恐れもある。
「巨額賠償に基地局の使用差し止め、どちらを認められても楽天モバイルの打撃は大きい。同社にとってまさに正念場だ」。モバイル大手社員はこう指摘し、ライバル同士の訴訟のゆくえを注視している。(ジャーナリスト 白井俊郎)