コロナ罹患の労災、76%が医療・福祉関係者
では、2020年の労働災害における新型コロナウイルスの影響はどうだったのか――。新型コロナウイルスの罹患による死傷者数は6041人にのぼっている。
業種別でみると、保健衛生業が4578人(うち医療保険業が2961人、うち社会福祉施設が1600人)と圧倒的な数になっている。次いで、製造業の345人、建設業の187人の順だ。
一方で派遣労働者の労働災害発生状況は、2019年まで5年連続で増加していたが、20年は減少に転じた。死傷者数は前年比604人(10.2%)減少し5307人となった。死亡者数は前年の15人から8人に減少している。
業種別では、製造業が前年比386人(15.5%)減の2098人、陸上貨物運送業同114人(18.9%)減の620人で約65%を占めるが、いずれも減少している。
新型コロナウイルスの罹患により、保健衛生業で大勢の労働災害が発生している半面、コロナ禍の感染拡大による経済活動の低下により、派遣労働者は雇止めなどを受けたことで、労働災害の減少につながっていると推察できる。
労働災害の減少のための「第13次労働災害防止計画」(2018年度~22年度)では、2017年比で死亡者数を15%以上、死傷者数を5%以上減少させる目標を掲げている。死亡者数は目標を達成しているものの、死傷者数は目標から大きくかけ離れており、達成が困難な状況だ。
死傷者数の減少には、高齢者の労働災害の発生防止が喫緊の課題だ。高齢化の進展、政府による雇用制度改革、年金受給年齢の引き上げなどにより、高齢者の労働者は増え続けており、同時に労働災害の発生率が上昇しているのは明らかだ。
加えて、外国人労働者の労働災害防止に取り組む必要がある。外国人労働者は総じて、危険を伴う仕事に就いており、労働災害に遭っている。特に日本人労働者の労働災害率が高齢者で高いのに対して、外国人労働者は39歳以下で労働災害が発生しており、最も多いのは20歳代となっている。
若い世代の外国人労働者が、異国の日本で労働災害に遭うことのないよう、十分な防止策と労働災害に遭った際の救援策を充実させていく必要がある。(鷲尾香一)