増える労災 犠牲は「70歳」雇用延長の高齢者と「危険な仕事」担う外国人労働者(鷲尾香一)

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   厚生労働省が発表した2020年の「労働災害発生状況」によると、死亡者数は前年比43人(5.1%)減少し、802人と3年連続で過去最少を更新した。

   その半面、休業4日以上の死傷者数(以下、死傷者数)は前年比5545人(4.4%)増加して13万1156人と、2002年以降で最多となった。

   死亡者の減少に対して、死傷者数の増加には大きな特徴がみられている。

  • 高齢者や外国人労働者に労働災害が増えている
    高齢者や外国人労働者に労働災害が増えている
  • 高齢者や外国人労働者に労働災害が増えている

原因は転倒、転落 運送業や建設業で目立つ

   死傷者数の増加の特徴は、一つは60歳以上の高齢雇用者の死傷者数の増加だ。雇用者全体に占める60歳以上の占める割合は18.0%となっており、その割合は増加の一途を辿っている。

   これに伴い、死傷者数に占める割合も26.6%と全世代の中で最も高くなっている。たとえば労働災害発生率では、最も少ない30歳前後に比べ、65~69歳の発生率は男性で約2倍、女性で約4倍にのぼる。

   その特徴は、業種別では陸上貨物運送業が他の業者に比べて突出して高く、1000人当たり約7人の発生率となっている。

   また、原因としては「転倒」によるものが最も多く、次いで「墜落・転落」となっているが、65歳以上の高齢女性による転倒が最も多く、20歳以下の女性に比べて約16倍(1000人当たり約2.3人)の発生率となっている。

   死傷者数が増えた、もう一つの要因が外国人労働者の死傷者数の増加がある。外国人労働者の死亡者数は前年比9人(42.9%)増加し30人、死傷者数は754人(19.2%)増加して4682人となった。

   業種別では、死傷者数は製造業が前年比90人(4.1%)増の2273人と圧倒的だが、増加数、増加率でみると建設業が前年比214人(36.7%)増の797人、陸上貨物運送業が160人(2.0倍)増の313人と、大きく増加している。

   年齢層では20~24歳が前年比159人(20.0%)増の954人、25~29歳が214人(29.8%)増の932人、30~34歳が126人(22.8%)増の679人、35~39歳が81人(19.1%)増の506人と、若い外国人労働者が圧倒的に多い。

鷲尾香一(わしお・きょういち)
鷲尾香一(わしお・こういち)
経済ジャーナリスト
元ロイター通信編集委員。外国為替、債券、短期金融、株式の各市場を担当後、財務省、経済産業省、国土交通省、金融庁、検察庁、日本銀行、東京証券取引所などを担当。マクロ経済政策から企業ニュース、政治問題から社会問題まで、さまざまな分野で取材。執筆活動を行っている。
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