小田急電鉄の株価が2021年4月30日の東京株式市場で前営業日の終値比で124円(4.3%)高の3005円まで上昇。約1か月ぶりに3000円台を回復した。大型連休明けの市場でも大崩れはしていない。
4月28日の取引終了後に発表した22年3月期連結決算の業績予想で、最終損益を135億円の黒字(前期は398億円の赤字)とし、コロナ禍を克服する見通しを示したことが好感されている。
2022年3月期の黒字転換を好感
それでは、業績予想を確認しておこう。売上高にあたる営業収益は前期比2.4%増の3952億円、営業損益は195億円の黒字(前期は241億円の赤字)を見込む。小田急は運輸業(鉄道、バスなど)と流通業(百貨店など)が、経営の2本柱。このうち主力の鉄道業については「上期は平時の80%程度から徐々に回復し、下期は85%程度で推移する」ことを、百貨店業は「通期で平時の90%程度」であることを前提とし、コスト削減を進めて利益を確保するとしている。
また、その他の事業に含まれるホテル事業は、「通期で平時の50%程度」と最も厳しい前提を置いている。4月25日からの緊急事態宣言による影響は織り込んでいないため、そのことは差し引く必要があるが、株式市場の反応は3度目の緊急事態宣言を踏まえても買いが優勢となった。
業績予想の発表と同じ日に、高級ホテル「ハイアットリージェンシー東京」(東京都新宿区)を運営する子会社「ホテル小田急」で、希望退職(人数等非公表)を実施する経費削減策を明らかにしたことも投資家を引き寄せたようだ。
インバウンド需要蒸発の影響が直撃するハイアットリージェンシー東京の客室稼働率は21年3月期に11.7%(前期は75.9%)にとどまっており、3月末でレストランやプールなど7施設を閉鎖するなど運営規模の縮小を進めている。
通勤定期の落ち込み、意外? に限定的
一方、4月28日には、27年3月期までの6年間の経営ビジョン「UPDATE小田急」も発表した。前半3年を「体質変革期」、後半3年を「飛躍期」と位置づけ、前半3年の3つの経営課題として、「利益水準の回復」「有利子負債のコントロール」「事業ポートフォリオの再構築」を挙げた。
株価の上昇基調を確かなものにするためには、「体質変革」に向けた具体策を示し、実行していくことが求められそう。
ちなみに、21年3月期連結決算は売上高にあたる営業収益が前期比27.7%減の3859億円、営業損益が241億円の赤字(前期は411億円の黒字)、最終損益が398億円の赤字(前期は199億円の黒字)だった。最終赤字は業績予想で示していた426億円をいくぶん下回ったものの、過去最大だ。
主力の鉄道事業の営業収益(売上高)は33.2%減の878億円だった。鉄道の運輸収入のうち定期は29.1%減、定期外が36.8%減と、定期外の減少率が大きかった。定期については、会社負担が多い通勤定期は会社員らのテレワークが進んでいても24.2%減と相対的にマイナスは限定的だったのに対し、通学定期は59.8%減と大きく落ち込み、一斉休校や大学を中心としたオンライン授業の普及が大きく影響したようだ。(ジャーナリスト 済田経夫)