仕事をする時は、自分なりに段取りを決め、自分のペースでやりたいという人が大半だと思います。たとえば午前中は残務の処理に充て、午後には打ち合わせや会議など、1時間を1単位としてスケジュールを組む人が大半ではないでしょうか。
とはいえ、私自身もよく経験することですが、自分の決めたスケジュールに沿ってメールを打ったり、作業をしている最中に、「ちょっといい?」「5分だけいいかな?」と声をかけてくる人がいます。
仕事の手を止めて急ぎで伝える
「ちょっといい?」と声をかけてくる人に対して「待ってました!」と歓迎する人は、まずいないと思います。かといって、
「すみません、今、作業中なので...」
「このメールを書いてからでもいいですか?」
と断る人も、あまりいないでしょう。その瞬間に、相手の機嫌を損ねる危険性があることを知っているからです。
そのため、たいていの人は気が乗らなくても自分の手を止め、相手の話を聞くことになると思います。本来であれば、仕事をしている人の手を止めることは良しとされませんし、止められたほうもいい気分にはなりません。
しかし、職場のコミュニケーションにおいては、自ら主体的に手を止めてでもやらなければいけない、緊急性の高い伝達業務が存在します。代表的なものが、感謝とお詫びです。稼げる人はどのようにやっているのでしょうか。
何か緊急にやるべき仕事があり、仕事仲間が夜遅くまで付き合ってくれたとします。その後、仕事がバタバタしていて時間があいてしまったら。相手はどう思うでしょうか?
「今さら何なんだよ」と呆れられることでしょう。そう考えると、やはりどんなに時間がなくても、いろいろな段取りをはずしてでも、「感謝」の気持ちは早く伝えるべきだと思います。
しかもしっかり、急いで伝えていること。あるいは内容的に適しているツールに送るセンスが問われます。業務的に会食を禁止している会社もあります。そんな会社の担当者と私的に近くても会食したあとに時間をとっていただいた御礼を会社のメールに送っていいのか? あるいは詳細な内容まで記載して送っていいのか? 考えどころですよね。
電話にしたほうがいい場合も考えられます。そのあたり、相手のレギュレーション=規則を踏まえて、タイミリーに行っていきましょう。もし、わからなければ聞いておくべきと思います。
「お詫び」をプラス評価につなげる
続いて、お詫びに場合はどうか? お詫びするのは原則として、自分のやるべきことが相手の期待どおりにできていなかった時や、自分で「これをやろう」と決め、相手にも約束していたことが、果たせなかった場合です。
そうなると、迷惑をかけた相手に「ごめんなさい」と、非を詫びなくてはなりません。ひと言に「お詫び」といっても、迷惑をかけたレベルによって、謝り方の程度も異なるものです。
たとえば、あなたが約束の時間に10分遅れたとします。そこで「ごめんなさい」とひと言謝れば、相手は「まあ、仕方ないか」と思ってくれるかもしれません。とはいえ、相手からしてみれば、そのひと言であなたを「許した」わけではありません。あくまでも「仕方ないな」と、その場がひとまず収まるだけです。
ところが、ここで「ごめんなさい。もう二度としません」と「お詫び」の程度を少し強めると、「そこまで言うなら、わかりました。もう気にしないで。こちらも忘れるから」と、相手の怒りが収まることもあります。
さらにお詫びの程度を強め、申し訳ない気持ちを言葉や態度で真摯に伝えると、その姿勢から誠意を感じてもらえ、「マジメで信頼できる人間だ」と評価がプラスに転じるケースもあります。なかなか難しいですが、お詫びをする時には、できればここまで持っていきたいものです。
このように、お詫びをする時に大事なことは、自分が犯したミスよりも「ワンランク上のミスをしてしまった」というつもりで相手に接することです。
10分遅刻したとしても、30分遅れたような気持ちで対応するのです。相手の人や状況によっては10分の遅刻でも致命的な場合もありますので、お詫びをする時は少し大げさなくらいがちょうど良いと思います。
誠心誠意のお詫びを台無しにするNG行為はコレ!
ただし、どんなに誠心誠意お詫びをしても、その効果を一瞬で打ち消してしまうNG行為があります。それは「聞かれてもいないのに、先に言い訳をすること」です。電車の遅延が原因で、約束の時間に10分遅れてしまった場合。人は相手の顔を見た途端、第一声で「電車が遅れたので遅れてしまいました」と言い訳してしまいがちです。
しかし、待たされていた人の立場で考えてみてください。どんな理由があろうと、10分待ったという事実に変わりはありません。「理由はいいから、まずは遅れたことに対してお詫びの言葉が欲しい」というのが本音ではないでしょうか。
また、「電車が遅れたので遅れてしまいました」と一方的に言われても、その言い方によっては「開き直り」や「逆切れ」ととられてしまう可能性もあります。想定外の電車事故による遅延で遅れたりすれば、自分こそ被害者であると感じてしまいがちですが、どんな理由があろうと、まずは申し訳なさそうに「遅れてすみません。本当にごめんなさい」とお詫びの気持ちを真摯に伝えることが大事です。
相手がその理由を聞いてくるまで、自分の口からは言わないように意識しなくてはなりません。そこで相手から「どうして遅れたの?」と聞かれて、初めて「じつはこういう事情がありまして......」と理由を説明する。そうすれば相手も、「それなら仕方ないよね」と納得し、怒りを収めてくれる可能性が高くなります。(高城幸司)