水素バブルの脇役に転落したトヨタ自動車
「週刊ダイヤモンド」の第2特集は「1100兆円の水素バブル」。これまで水素社会の実現に向けて政財界を巻き込んで先頭に立ってきたのはトヨタ自動車だが、今回の水素バブルでは主役になれそうにないというのだ。
政府が20年12月に発表したグリーン成長戦略で、水素の主役がFCV(燃料電池車)から発電に交代した意味を解説している。
「水素ガスタービンを使って発電する水素発電の1基(出力100万キロワット)当たりの水素消費量は、なんとFCV400万台に相当する。日本で大量に水素を導入し、脱炭素社会に向かうのならば、FCVではなく発電に振り切った方が手っ取り早いのである」
海外から大量に水素を輸入するプロジェクトに取り掛かる総合商社がメインターゲットにする需要家は電力業界であり、トヨタは脇役に成り下がった、と厳しく見ている。
この水素ビジネスでしのぎを削るのが、三菱商事、三井物産、丸紅だ。企業集団の総力戦になりそうだという。
しかし、水素発電のコストは原発の9倍で、エネルギー効率は最悪だ。水素バブルは本物なのか、しぼんでしまうのか。「グリーン成長戦略」という美辞麗句にとらわれない本誌のような分析記事は貴重だ。