大好評で年末年始も出社
――「マスクのほね」の特徴を教えてください。
武林さん「商品名は社長が試作品を見たときに『骨みたいやな』と言ったのがきっかけで『マスクのほね』に決まりました。横幅175ミリの不織布マスクに対応しています。高さは6ミリで、通常より強度がある素材を使用し、消耗品ではありますが長く使えるようになっています。世の中を回すために病院や工場などの現場に届けたいという想いから、10、50、100本の3パターンで販売しています」
――どのような手順で、製作を進めていったのでしょう。
武林さん「11月くらいに『マスクのほね』を作ろうと決めましたが、弊社の場合は金型を作るのにおよそ2か月かかります。正月になると感染者が増えて間に合わないと思い、1回の成型で1、2本しかつくれないけど、すぐにできる試作用の金型を使いました。
12月の販売には間に合いましたが、反響が大きかったので瞬く間に完売し、足りなくなりました。なので年末年始も出社して、自分たちで成形して梱包して出荷。全然間に合わないので社員の家族にも手伝ってもらいました」
※現在は他のメーカーが成形以降を手掛けている。
――今年(2021年)4月には「マスクのこぼね」を発売しました。こちらはどのような経緯で開発したのでしょう。
武林さん「『マスクのほね』に対するメッセージの中で、一番多かったのが女性ユーザーからの『小さめサイズが欲しい』という声でした。ですが『マスクのほね』は反響がすごかったので、生産が追い付いてなかった。今でも精いっぱいなのに、さらにやるのは無理じゃないかと思いましたが、多くの方々に労いの言葉をいただく中で、いち早く作って届けることが大事だと考え決断しました」
――「こぼね」の長さは145ミリ。「ほね」と変更した点はサイズだけでしょうか。
武林さん「ほねの長さを短くするだけだと、口元の空間が狭くなります。ですが空間を作ろうと幅を狭めると、ほねが頬に刺さる。私たちの妻や娘にも試着してもらいましたが、顔の大きさは人それぞれ違うので、万人にフィットするものは難しかったです。最終的にはフレームの端を外側に広げて、頬に沿うようにしました」
――小さいサイズならではの工夫がされているのですね。試作品も結構作ったのですか。
武林さん「『マスクのほね』は、数えきれないほどトライ&エラーをやっています。当初は倍の厚みがありましたが、いい素材を使ったので薄くできました。
『マスクのこぼね』のトライ&エラーは14回です。本当は何十回もできたら確実なものになりますが、『マスクのほね』のように8か月かけていては、絶対に間に合わない。そういう意味では、14回は必死にやった結果です」