あふれる開発意欲「自分を超えるのは自分でありたい」
加藤社長には、発電機を世に出すにあたり「どうせ作るなら、絶対壊れないものを作ろう」という思いが強くあった。
そこで、南極と同じような過酷な環境下に発電機を2年間放置するという実証実験を行った。その結果、何の損傷もなく作働していたことで堅牢な発電機であり、メンテナンスが不要なことも証明した。ブレードの素材がアルミであることから、耐久年数が過ぎた後の再利用を可能にし、環境への負荷が極めて少なくした。これも見逃せない特徴である。
10年前、すでにSDGs(持続可能な開発目標)の目標12にある「つくる責任、つかう責任」を実践していたわけだ。
これからの課題は、製造コストを抑えることにある。ブレードの形状が特殊のため、現状は職人技といわれる熟練者が手作業で手掛けている。いずれ受注が増えてくれば、機械で製造ができるようになるだろうが、そのためには多額の投資が必要となる。
ここで、加藤社長は次の一手を考えていた。トルネード型風力発電機は街中でも設置ができる利点を生かして、たとえば通信アンテナや監視カメラ、各種センサーの設置。デジタルサイネージなどの広告塔や、ひょっとしてドローンの充電基地として活用できるのではないかと考え、それらを併設することで大幅なコストダウンが図れる可能性が出てくるのではないかと考えていた。
「すでに発電効率を1.5倍に上げる、新たな発電機を考案中」という。
この発電機の詳細は、まだ発表できないが、実現すれば大幅なコストダウンになることは間違いない。そのほかにもクルマに取り付けて燃費の向上を図る小型の風力発電機や小型の水力発電への応用など、空気や水など自然の力が流れる、さまざまな場面での「発電」が期待できる。
地球が自転している限り、「風」は途切れることはない持続可能な自然エネルギーである。加藤社長が、25年以上も前から取り組んできた自然エネルギーの活用は、これからもさまざまに進化していくのだろう。
数年後には、現在の発電機の特許が切れるそうだ。加藤社長は、新たな特許を取得することに意欲を燃やしている。誰も考えつかなかった異形のトルネード型風力発電機。「自分を超えるのは自分でありたい」という言葉に、開発しつづける発電機への思いと地球環境を救う使命感がにじむ。
今後のさらなる活躍を、多くの人に注目をしてほしいと思う。(清水一守)