高齢者を対象にした新型コロナウイルスのワクチン接種が始まって間もなく1か月になるなか、接種に便乗したとみられる悪質商法への相談が増えてきている。
「新型コロナワクチン詐欺 消費者ホットライン」を設けている国民生活センターによると、これからワクチン接種が本格的に進むことから、主な相談事例と消費者へのアドバイスをウェブサイトで紹介して、注意を促している。
行政機関が個人情報を聞き出すことはない
国民生活センターでは、2021年2月15日にホットラインを開設。4月22日までに741件の相談を受け付けたが、一般の高齢者への接種が始った4月に入ってからの相談件数は388件と急増している。
このうち、ホットラインを通じて寄せられたワクチン詐欺が疑われる相談件数は17件。また、全国の消費生活センターなどに寄せられたワクチン詐欺が疑われる相談件数は、少なくとも65件あるという。
国民生活センターでは4月30日に、事例などをウェブ公開した。
■事例1 スマホに「ワクチン接種の優先順位を上げる」というメッセージ
スマートフォンに「新型コロナワクチン接種の優先順位を上げる。2週間以内に振り込めば、入金確認後に接種日をお知らせする」という内容のメッセージが届いた。メッセージには相談者の居住地の都道府県名と携帯電話番号が記載され、金額は約10万円。振込先は大手銀行の支店だった。問い合わせ先として所管省庁の窓口と電話番号も記載されている。(50代男性)
■事例2 「ワクチンを優先的に接種できる」と所管省庁を騙った電話
ワクチン接種の所管省庁の担当者と名乗る人物から電話。相談者の名前を告げて、「高齢者は順次ワクチンを接種するが、基礎疾患がある人は特別に早く接種できる。優先的に接種したいか」と問われた。相談者は断ったが、その後再度同じ人物から連絡があり同じ問い。相談者が役所に確認すると伝えたら電話は切れた。相談者によると相談者の個人情報を細かく知っており怖くて不安と相談。(60代女性)
■事例3 余ったワクチンを案内していると電話
ワクチンの関係団体のようなところから電話。「医療従事者から順次ワクチン接種が始まっているが、余った枠を案内している。新薬なので費用は約50万円だ」という。その後また同じような電話があり「詐欺ではないのか」と指摘したら電話は切れた。(40代男性)
■事例4 中国製ワクチンを有料で接種しないかという勧誘
電話で所管省庁の職員を名乗る人物が「もうすぐ政府に承認される中国製の新型コロナウイルスのワクチンを数万円で接種できる」と言ったが、怪しいと思い、それ以上はよく聞かずに断った。その後毎日のように同じ時間帯に非通知の着信があるので再度出たところ、所管省庁から委託された者と名乗った。話の内容は同じだったので断った。(50代男性)
■事例5 ワクチンの関連で口座情報などを尋ねる電話
携帯電話に出たら相手が一方的に話し出し、「新型コロナワクチンに関することでお金がかかる」と言い、相談者の銀行の口座情報、電話番号、名前などを聞き出そうとしてきた。途中からおかしいと思い何も話さずに電話を切ったが、お金を取られないか心配だ。(50代男性)
「優先接種」や「余ったワクチン」との交換を装い、金を騙し取ろうとする手口が多いという。国民生活センターは「接種を受ける際の費用はすべて公費負担。ワクチン接種に関連付けて金銭を求められても決して応じないで」と注意を促す。
さらに、ワクチン接種に関連づけて個人情報などを聞き出そうとする電話については、行政機関は一切そのようなことは行わないと強調。「個人情報や金融機関情報などを聞かれても答えないで」と警告。ワクチン接種に必要な「接種券」や「接種のお知らせ」は、市区町村から届くと念を押した。