小学2年生から約8年にわたって不登校を経験、18歳でイベント企画の合同会社「和―なごみ」を起業し、現在は株式会社ゲムトレの代表取締役も務める小幡和輝さん(26)。「ゲムトレ」は2019年10月にリリースされた、プロのゲームトレーナーからゲームの遊び方を学ぶプログラムだ。
これまでやってきたイベント企画とは畑が違うが、小幡さんは幼い頃からゲームをプレイ。特に中学生の頃に打ち込んだカードゲームは「起業の原体験」となっており、特別な思い入れがある。「ゲムトレ」事業は、いわば原点回帰なのだ。
後編は、小幡さんのゲームへの思い、「起業」を通じて伝えたいことを聞いた。
参考リンク:不登校から18歳で起業 人生を救ってくれた「ゲーム」を通じて、子供たちに伝えたいこと(前編)【若手経営者インタビュー】
「ゲームを頑張ってもいい。もっと評価されるべき」
――なぜ「ゲムトレ」の開発を思い立ったのでしょうか。
小幡和輝さん「『ゲームに人生を救われた』という想いがあります。学校に行かなくなった後も、ゲームがあったから友達をたくさん作れたし、ゲーム大会での経験が僕の自信につながりました。なので、ずっとゲームで何かやりたいとは思っていました。
きっかけは、ゲムトレを立ち上げる3か月くらい前に『ゲームは人生の役に立つ。生かすも殺すもあなた次第』(エッセンシャル出版社)を執筆し、その中で『ゲームは習い事になっていくだろう』と書いたことです。本に書いたらやりたくなってきて(笑)」
――ゲームが「習い事」になるんですか。
小幡さん「たとえば、囲碁・将棋だと、最初は娯楽として広まって、競技になって、プロ・名人が出てきて、その人に憧れてうまくなりたいから習い事として成立していると思います。ゲームもまさに娯楽からスタートし、プロゲーマーが生まれ、eスポーツといった競技の世界ができています。次は習い事ですよね」
――競技で勝つために、うまい人に習いたいと思う人はいるかもしれませんね。
小幡さん「でも、ゲームはまだ『プロになれないならやっててもしょうがない。そんなことより勉強しなさい』と言われる風潮があります。スポーツだってプロになれる人は少ないのに、そんなことは言われない。そこにゲームを持っていきたいと思いました。ゲームを頑張ってもいい、もっと評価されるべきだと。
だから『ゲムトレ』というサービスを作って、ゲームを頑張ることは価値があると伝えたかった。プロゲーマーを育成しようとはあまり思っていません」
――では、「ゲムトレ」を通じて、子どもたちに何を伝えようとしているのでしょうか。
小幡さん「『ゲームとの正しい付き合い方』です。たとえばプレイ中に暴言を吐く、誰かをいじめるというのは、本来の遊び方ではないですよね。顔が見えない、名前もわからないからそうなるのかもしれません。
一方、ゲムトレは、トレーナーも生徒もお互い顔出しで、名前までわかります。当然、みんなちゃんとやるんですよ。トレーナーは、ゲームの技術に長けているのはもちろんのこと、生徒との接し方や言葉遣い、ネットリテラシーなどの研修を事前に受けています。
ゲームはあくまでツールとして、人とコミュニケーションとって楽しく遊ぶ、うまくなるために努力をしていくのが、本来の遊び方だと思っています」