「旧帝大卒なのにパート 『学歴なりの仕事』がしたい!」高学歴自慢主婦の投稿が大炎上! 専門家に聞いた

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「旧帝大卒の私が、扶養内パートなんて...。『学歴なりの仕事』がしたい!」

   こんな高学歴専業主婦の投稿が大炎上している。

「プライド高すぎ、何様のつもり!」
「国立大学を出てレジ打ちしている人は山ほどいますよ」

という反発が殺到する一方、

「私も有名大学卒で元官僚のパート。共感します」
「学歴を生かして非常勤の講師を目指したらいかが」

などとエールを送る人も多い。

   女性の働き方に詳しい専門家に聞いた。

  • 高学歴でレジ仕事をしている人はたくさんいる
    高学歴でレジ仕事をしている人はたくさんいる
  • 高学歴でレジ仕事をしている人はたくさんいる

「教授夫人で東大卒ですが、スーパーのレジパートです」

   話題になっているのは女性向けサイト「発言小町」(2021年4月30日付)に載った「高学歴専業主婦の扶養内パート」というタイトルの投稿だ。

「私はある旧帝大(東大や京大ではありません)経済学部を卒業した30代後半の主婦です。税理士などの資格は持っていません。出産後まで大手企業で働いていましたが、夫が長期海外赴任となり、会社を辞めてついて行きました。帰国後、1年間は子どもが日本の生活に慣れるまで専業主婦として暮らし、昨年ようやく学校の事務補助の仕事を扶養内で得ました」

   しかし、臨時職員のような仕事では満足できない。もとの会社への復帰なども考えたが、ママが家にいることが当たり前で、学童に行きたくないと子どもたちが言うので踏み切れない。数年後の中学受験準備のためにも扶養を外れるほど仕事を増やせない。

「以前は学歴なりの仕事をしていたこともあり、もっと難しいことがしたい。臨時雇いの軽作業パートでは良い大学を出してくれた親にも申し訳ない。母親としての思いとの板挟みです。大卒専業主婦で扶養内パートの方、どのような仕事をされていますか?」

と問いかけていた。

   この投稿には、「高学歴のパートの人はヤマほどいますよ」「何様ですか」という反発の意見が多かった。

「『自分は高学歴です』と言い切ること自体、『あちゃ~』と思います。私は昭和40年代生まれですが、旧帝大を出てフードコートでパート、レジ打ちのパート、ファミレス、コンビニでのパート。私たち世代ではいっぱいいます。でも、そういう仕事は嫌で、『高学歴を生かした仕事』をしたいのですね。プライド高いな、と思いました」
「ご近所のお友だちは、大学教授夫人で東大卒ですが...... スーパーのレジパートです。私のゼミの教授夫人も高学歴ですが、清掃パートでした。黙々とできることが良かったらしいです。旧帝大を卒業して10年以上経って『卒業した事実以外に何が残っているのか』だと思います。10年前の携帯電話、いくら当時の高性能と言っても今は使えませんよね? 考え方を変えたほうがいいです」

「子どもにお手本を示すために正社員に戻ったら」

   子どもにお手本を示すためにも「正社員に戻ったらどうか」という意見もあった。

「せっかくお受験して難関大学を出ても、扶養内パートという将来像(ママの現在)を見せられては、お子さんのお受験意欲に全然貢献できないですよね。母親としての務めは、学歴を有効利用している大人のお手本を見せることです。ちゃんと再就職してしっかり稼げる正社員になったらいかがでしょうか」
非常勤講師はオススメです
非常勤講師はオススメです

   一方、私も高学歴でいろいろ悩んだと共感する意見も多かった。非常勤講師や起業を目指してはいかが、などとさまざまなアドバイスが寄せられた。

「非常勤で教員、ぜひぜひ! 10年続けていますがとてもいいです。長期休暇は子どもと一緒に休めますし、子どもが早く帰ってくる曜日は午前上がりにしてもらっていました。私立なら時給3000~4000円くらい。職場は常識的な人ばかりで、対人関係のストレスはありません。免許は、学部卒なら通信教育で簡単に取れます。現在は、教員がブラックな職場だということで倍率が下がっており、以前では考えられなかったレベルになっています」
「経済学部を出たのなら、起業されたらいいのにと思います。私も持病の悪化により仕事は辞めて、4年前から収益化できることを自宅で細々としていて、現役時代の半分ほどの年収があります。学歴なりの仕事がしたいという言葉、とてもよくわかります」
「あなたのような人が多く働いているのは大学です。大学の事務、研究室の秘書......。時間や曜日の自由がきくこと、ある程度の能力が求められることからピッタリと思います。有期雇用でそれほど時給もよくないのですが、扶養内なら問題にならないでしょう。大学のホームページから募集していたりしますので、ぜひ探してみて下さい」
資格の勉強をするのはいかが?
資格の勉強をするのはいかが?

   資格をとる勉強をしてはどうか、というアドバイスも目立った。

「私は有名大卒、国家一種に合格した元官僚ですが、夫の転勤を機に仕事を辞めました。少し共感します。正直、パート事務職はしんどいなと思いました。コールセンターでは周りのレベルの低さ(文字どおり、言われたことしかできない)や、自分がいなくても仕事が回る感じからまったくやりがいを感じませんでした。その後、接客パートに切り替えたところ、とても楽しく働けています。そして、残った時間を資格試験の勉強に充てています。バリキャリに復帰することを夢見て、子育てをする。資格試験に合格したあと卒業大学や当時のキャリアを武器にして就職する。最近、バリキャリ復帰した後、子育てが一段落したタイミングで某大学院に通うことも画策しています。あなたも楽しく活き活きとしていることが親御さんにとっても幸せなのではないでしょうか?」

「パートの仕事にプライドを持っている人がたくさんいる」

   J‐CASTニュース 会社ウォッチ編集部では、今回の旧帝大卒女性の「学歴なりの仕事がしたい」という投稿に関する論争について、女性の働き方に詳しいワークスタイル研究家の川上敬太郎さんに意見を求めた。

――今回の投稿と回答者たちの意見を読んで、率直にどのような感想を持ちましたか?

川上敬太郎さん「高学歴の方ならではの悩みだけに、回答者の方々も受け取り方がさまざまなのだと思います。一方で、投稿者さんが言う『学歴なりの仕事』とは、どのような仕事をイメージしているのか、それが投稿者さんの中で具体的になっているのかどうかが気になりました。
また、基本的に家事や育児は投稿者さんが受け持っているとお見受けします。『扶養を外れるほど仕事を増せない』とのことですが、家事・育児を夫とシェアする方法もあると感じます。投稿内容だけでは、投稿者さんが家事・育児を受け持つ前提で仕事を探さなければならない背景がよくわかりません」

――投稿者は、超高学歴である自分が扶養内パートでいることに対して、不満を持っています。このようなケースの調査はこれまでにありますか。

川上さん「高学歴に相応しい仕事をしているかという調査ではありませんが、働く主婦層に特化した人材サービスの『しゅふJOB総研』が行った『結婚・出産後の再就職に学歴は影響するか?』という意識調査に携わったことがあります。
すると、『学歴が影響する』と回答した人の比率は四年制大学・大学院出身者のほうが、そうでない人より低くなりました。フリーコメントには『主婦で子育て中のパートには、学歴なんか聞かれもしない』という四年制大学出身者の声も寄せられており、投稿者さんと同じように高学歴であっても、評価されないと感じている主婦が一定数いることがうかがえます。
一方で、なかには応募条件が四年制大学卒以上となっていたり、学歴で基本給に差がついていたりする求人もあります。ご自身が高学歴だとあまり意識しないのかもしれませんが、そうでない人にとっては学歴の影響を強く意識せざるを得ない場面もあります」
プライドばかり高くても
プライドばかり高くても

――投稿者の不満、あるいはプライドについて、多くの人から「学歴にこだわりすぎている。そういうプライドを捨てなさい」という反発が非常に多いです。

川上さん「投稿内容を見て、投稿者さんがパート勤務の仕事を見下しているような印象を持った人もいるのではないかと思います。それが『プライドを捨てなさい』という意見につながっているのではないでしょうか。ただ、パートの仕事にプライドを持って働いている人がたくさんいます。その人たちからすれば、プライドを捨てなくてはできない仕事だと思われてしまうこと自体が心外なはずです。
そもそも仕事とは成果が求められる場であって、学歴の高さを競い合う場ではありません。学歴の高さという格付けのような〈プライド〉とパート勤務などの条件に応じた〈仕事の選択〉とは本来無関係で、まったく別次元の話です」

――方で、投稿者と同じような高学歴で専業主婦をしている人から共感も寄せられています。さまざまな具体的なアドバイスがあります。曰く「非常勤講師がオススメです」「起業をしたら」、「海外経験を活かした仕事をしては」などなどです。

川上さん「それぞれが、とても参考になる意見だと思います。具体的なアドバイス内容と照らし合わせることで、投稿者さんがイメージする『学歴なりの仕事』の輪郭がよりハッキリと見えてくるようになるのではないでしょうか」

――回答者の中には「学歴にこだわるより、スキルを磨くための資格の勉強をしては」という意見が非常に多かったですが、どのように思いますか。

川上さん「学歴というのは、一定水準以上の学力を有している証であり、誇るべきものだと思います。しかしながら、学歴は必ずしも仕事に直結するものではありません。もし、投稿者さんが言う『学歴なりの仕事』という言葉が、高学歴であることのプライドに相応しいという意味なのであればナンセンスです。いかなる仕事も人々の役に立つ貴い存在であり、プライドに相応しいかどうかという捉え方をすること自体が、パート勤務の仕事に対する冒涜だと感じます。
一方、そうではなく、『学歴なりの仕事』という言葉が、大学で学んだことを活かしたいという意味なのであれば、培ってきた知識をどう活かして今後の仕事をより充実させるかを考えるべきだと思います。多くの回答者さんがアドバイスされているように、スキルを磨くためにさらに勉強することは、すでに学んできた素地がある投稿者さんにとって、新たな可能性を広げることにつながるものと思います」

「難易度が高く責任も重い短時間正社員を目指しては」

――なかには、せっかく旧帝大を出た高学歴なのに専業主婦の扶養内のパートでは、お受験を目指す子どもに対して「ロールモデル」(お手本となる人物)にならない。正社員を目指すべきだ、というキツイ意見がありました。

川上さん「正社員と呼ばれる働き方を目指すことも一つのロールモデルだと思いますが、高学歴を目指す目的はさまざまです。仕事に結びつかなくても、教養を深め、知性を磨くこと自体も学問に励む大切な目的の一つです。また、専業主婦も社会における立派で貴い役割の一つです。学問を修めた人が専業主婦としての務めを果たすこともまた、立派なロールモデルの一つだと思います。
それぞれのご家庭にはそれぞれの教育方針があるため、何が正しいと一概に決められるものではないと思います。高度経済成長期と現在、そしてお子さんたちが社会に出るころの未来とでは、高学歴を求める意味も同じではないはずです。正社員だからロールモデルになる、専業主婦だからロールモデルにならない、と一面的な価値観で括るのではなく、学ぶことの意義そのものに目を向けることが大切なのではないかと考えます」

――川上さんなら投稿者にどんなアドバイスをしますか。

川上さん「まず、投稿者さん自身が考える『学歴なりの仕事』とはどのようなものかを具体的にしたほうが良いように思います。『もっと難しいことがしたい』という思いもあるようですが、単に難易度が高い仕事であれば満足することでもないように感じます。
仕事に貴賤はありません。パート勤務で単調な仕事であったとしても、そこから得られるものがある人もいれば、ない人もいます。また、なかにはパート勤務のような短時間でも、より難易度が高く責任も重い短時間正社員のような働き方もあります。『学歴なりの仕事』が短時間でやりがいのある仕事なのであれば、短時間正社員という選択肢もぜひ検討していただきたいと思います。
『学歴なりの仕事』のイメージが具体的になれば、自ら事業を起こしたり、個人事業主として仕事に携わったりすることも選択肢に入ってくるでしょう。いずれも時間の融通が利きやすく、かつ大学で学んだ知識や向学心を活かすこともできる働き方だと思います」
夫の家事・育児のかかわりがポイント
夫の家事・育児のかかわりがポイント

――夫がどこまで家事・育児に関わっているかも大事な問題になりますね。

川上さん「そのとおりです。家事や育児を投稿者さんが行うことが前提になっていると感じることが気になります。ご夫婦で話し合って納得した上での役割であればよいのですが、そうでないのなら一人で悩まずに、夫との間で家事・育児の分担方法について話し合い、再設計することも選択肢に入ってくるかと思います。
世の中にはまだ『夫は仕事、妻は家事』という性別役割分業意識が根強く残っています。一度、いまのライフスタイルをゼロベースで見直してみることで、新しいライフスタイルとワークスタイルのイメージが見えてくるかもしれません」
(福田和郎)
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