「パートの仕事にプライドを持っている人がたくさんいる」
J‐CASTニュース 会社ウォッチ編集部では、今回の旧帝大卒女性の「学歴なりの仕事がしたい」という投稿に関する論争について、女性の働き方に詳しいワークスタイル研究家の川上敬太郎さんに意見を求めた。
――今回の投稿と回答者たちの意見を読んで、率直にどのような感想を持ちましたか?
川上敬太郎さん「高学歴の方ならではの悩みだけに、回答者の方々も受け取り方がさまざまなのだと思います。一方で、投稿者さんが言う『学歴なりの仕事』とは、どのような仕事をイメージしているのか、それが投稿者さんの中で具体的になっているのかどうかが気になりました。
また、基本的に家事や育児は投稿者さんが受け持っているとお見受けします。『扶養を外れるほど仕事を増せない』とのことですが、家事・育児を夫とシェアする方法もあると感じます。投稿内容だけでは、投稿者さんが家事・育児を受け持つ前提で仕事を探さなければならない背景がよくわかりません」
――投稿者は、超高学歴である自分が扶養内パートでいることに対して、不満を持っています。このようなケースの調査はこれまでにありますか。
川上さん「高学歴に相応しい仕事をしているかという調査ではありませんが、働く主婦層に特化した人材サービスの『しゅふJOB総研』が行った『結婚・出産後の再就職に学歴は影響するか?』という意識調査に携わったことがあります。
すると、『学歴が影響する』と回答した人の比率は四年制大学・大学院出身者のほうが、そうでない人より低くなりました。フリーコメントには『主婦で子育て中のパートには、学歴なんか聞かれもしない』という四年制大学出身者の声も寄せられており、投稿者さんと同じように高学歴であっても、評価されないと感じている主婦が一定数いることがうかがえます。
一方で、なかには応募条件が四年制大学卒以上となっていたり、学歴で基本給に差がついていたりする求人もあります。ご自身が高学歴だとあまり意識しないのかもしれませんが、そうでない人にとっては学歴の影響を強く意識せざるを得ない場面もあります」
――投稿者の不満、あるいはプライドについて、多くの人から「学歴にこだわりすぎている。そういうプライドを捨てなさい」という反発が非常に多いです。
川上さん「投稿内容を見て、投稿者さんがパート勤務の仕事を見下しているような印象を持った人もいるのではないかと思います。それが『プライドを捨てなさい』という意見につながっているのではないでしょうか。ただ、パートの仕事にプライドを持って働いている人がたくさんいます。その人たちからすれば、プライドを捨てなくてはできない仕事だと思われてしまうこと自体が心外なはずです。
そもそも仕事とは成果が求められる場であって、学歴の高さを競い合う場ではありません。学歴の高さという格付けのような〈プライド〉とパート勤務などの条件に応じた〈仕事の選択〉とは本来無関係で、まったく別次元の話です」
――方で、投稿者と同じような高学歴で専業主婦をしている人から共感も寄せられています。さまざまな具体的なアドバイスがあります。曰く「非常勤講師がオススメです」「起業をしたら」、「海外経験を活かした仕事をしては」などなどです。
川上さん「それぞれが、とても参考になる意見だと思います。具体的なアドバイス内容と照らし合わせることで、投稿者さんがイメージする『学歴なりの仕事』の輪郭がよりハッキリと見えてくるようになるのではないでしょうか」
――回答者の中には「学歴にこだわるより、スキルを磨くための資格の勉強をしては」という意見が非常に多かったですが、どのように思いますか。
川上さん「学歴というのは、一定水準以上の学力を有している証であり、誇るべきものだと思います。しかしながら、学歴は必ずしも仕事に直結するものではありません。もし、投稿者さんが言う『学歴なりの仕事』という言葉が、高学歴であることのプライドに相応しいという意味なのであればナンセンスです。いかなる仕事も人々の役に立つ貴い存在であり、プライドに相応しいかどうかという捉え方をすること自体が、パート勤務の仕事に対する冒涜だと感じます。
一方、そうではなく、『学歴なりの仕事』という言葉が、大学で学んだことを活かしたいという意味なのであれば、培ってきた知識をどう活かして今後の仕事をより充実させるかを考えるべきだと思います。多くの回答者さんがアドバイスされているように、スキルを磨くためにさらに勉強することは、すでに学んできた素地がある投稿者さんにとって、新たな可能性を広げることにつながるものと思います」