新型コロナウイルスに対応した緊急事態宣言と「まん延防止等重点措置」について、東京、神奈川、千葉、埼玉の4都県の知事は2021年5月6日、11日までの期限を31日まで延長することを政府に要望した。大阪府も同日、緊急事態宣言の延長を政府に要望することを決めた。
政府も愛知県と福岡県を加えて延長する方向で調整しており、5月17日にIOC(国際オリンピック委員会)のバッハ会長の来日イベントを大々的に行い、東京五輪開催を盛り上げようとした菅義偉人首相の目論見は完全に消えた。
そのバッハ会長は、米メディアによれば、「ぼったくり男爵」として知られ、日本は東京五輪で「搾取」されるから中止したほうがスッキリするという。米メディアに心配されてどうする。恥ずかしくないのか、ニッポン!
バッハ会長は開催国を食い物にする悪癖がある
コロナ禍に揺れる日本国内の状況に、海外の有力メディアが相次いで、「東京五輪は中止すべきだ」と報道した。米紙サンフランシスコ・クロニクル(電子版)が5月3日、「Tokyo Olympics should not be held in 2021 under COVID's long shadow」(新型コロナの長期的な大流行のもと、東京五輪は開催されるべきではない)という見出しで中止を訴えた。
同紙スポーツコラムニストのアン・キリオンさんは、
「パンデミックは終息しておらず、終わりに近づいてすらいない。ワクチン接種が順調に進む米国では改善しつつあるが、インドや欧州の一部、南米の多くの国では深刻な状況が続いている。安全な形で開催するのに、開会式までの3カ月弱では時間が足りなすぎる」
と訴えた。
IOC(国際オリンピック委員会)のバッハ会長を「ぼったくり男爵」(Von Ripper-off)とまで酷評し、「日本はIOCにだまされる」と東京五輪の中止を訴えたのが米有力紙ワシントン・ポスト(5月5日付電子版)だ。「Japan should cut its losses and tell the IOC to take its Olympic pillage somewhere else」(日本はこれ以上の負担を切り、IOCにオリンピックを略奪するなと言うべきだ)という見出しで、五輪の中止を訴えた。
同紙のコラムニスト、サリー・ジェンキンスさんは、
「バッハ会長は『ぼったくり男爵』として知られている男だ。地方行脚で小麦を食べ尽くす貴族のように開催国を食い物にする悪い癖がある。多額の大会経費を開催国に押しつけている。彼が五輪を強行開催する主な理由はカネだ」
として、日本の世論調査で7割以上が中止・再延期を求めている現状や、大会に向けて多くの医療従事者を必要とすることが非難をされていることを取り上げ、
「世界的大流行の中で国際的なメガイベントを主催することは不合理な決定だ。日本にとって五輪のキャンセルは苦痛だが、スッキリする」
とアドバイスしたのだった。
アジア人攻撃のため進化したインド型変異株
確かに、東京五輪の開催にこれまで以上の暗雲が立ち込めている。インドで1日に35万人の感染者を出すほど猛威を振るっているインド型変異ウイルスだ。これまで日本をはじめとするアジアの人々は欧米人に比べて、新型コロナの感染者が少ないとされてきた。
しかし、インド型変異ウイルスは、そうしたアジア人の免疫を突破するように新たに進化したタイプだというのだ。それが、東京五輪を契機に日本に広がったらどうする。
東京新聞(5月1日付)「新型コロナ、インド変異株の発現は『アジア人の免疫から逃れるため?』日本人の6割で免疫低下か」が、その恐ろしさをこう伝える。
「インド由来の新型コロナ変異株が、英国株に続く『脅威』となる。日本人に多い白血球の型による免疫が効きにくくなるからだ。インド株は既に国内の空港検疫で20人、都内では1人から見つかった。インド株には『L452R』と『E484Q』という2つの特徴的な変異がみられる。東京大や熊本大などの研究チームは4月、L452R変異は日本人の6割が持つ白血球の型がつくる免疫細胞から逃れる能力があるという実験結果を発表した。これは、6割の日本人がインド株に対して免疫低下の可能性があることを意味する」
しかも、厄介なことにL452R変異は人の細胞とくっつきやすく、感染力が高い。L452R変異は、米カリフォルニア州から全米に広がった変異株からも見つかっている。カリフォルニア州は米国で最もアジア人が多い。だから、研究チームは「L452R変異はアジア人の免疫から逃れるために発現したとも仮定できる」と指摘する。現にインドでは、インド株が英国株を凌駕し、置き換わりが猛烈な勢いで進んでいる。
東京新聞は、こう結んでいる。
「日本では関西圏で英国株による感染再拡大が起き、首都圏にも広がっている。インド株が英国株の感染力を上回れば、今後、国内でも拡大する可能性が出てくる。研究チームを主宰する東大医科学研究所の佐藤佳准教授は『日本はこれまで、欧米に比べて感染者数や死者は少なかったが、L452R変異が脅威となる可能性がある』と話し、徹底した調査を求めている」
山中伸弥教授「今冬までワクチン接種済まないと...」
いったい、新型コロナはいつ収束するのだろうか。ノーベル生理学・医学賞を受賞した京都大学iPS細胞研究所長の山中伸弥教授は、朝日新聞(5月6日付)「『ワクチンが広がらないと来年の今ごろ...』山中教授の指摘」の取材に応じ、こう語っている。
「できるだけ早くワクチン接種できるような状況に、総力を挙げてもっていけるかどうかにかかっている。ここでワクチン接種が広がらないと、来年の今ごろまた同じことを繰り返している可能性がある。終息に向かわせようとすると、(今年冬までに)7000万、8000万人は接種を完了させないと、目に見えた効果はない。2回接種を想定すると、1億6千万回を感染が広がりやすい冬までに済ませる必要がある。ものすごい数が必要。それを本当にやる覚悟を持って、いま日本ができるかどうかっていうことが試されている」
とても、オリンピックなどやっている場合ではなさそうだ。