鹿児島「茶」支えるペットボトル需要
一方で、茶の飲み方は近年、急速に変化している。「若い世代を中心に、お茶は急須で入れるのではなく、ペットボトルで飲むものだという人が増えている」(流通関係者)という状況だ。こうしたなか、ペットボトル飲料を製造するメーカーにとっては、安定した品質の茶葉を大量に仕入れることが重要となっており、鹿児島産を大量購入するメーカーが増加。こうした環境の変化が鹿児島の茶栽培を盛り立てているといえる。
さらに、鹿児島は茶のブランドを「知覧茶」として統一する取り組みも進めている。古くから引き継がれてきた伝統のブランドが多数存在する静岡県と異なり、「鹿児島のお茶はわかりやすい」といった好意的な消費者も少なくない。鹿児島の躍進の裏には、地道に積み重ねてきた努力もあるというわけで、「21年にはいよいよ生産量でも鹿児島がトップを奪うのではないか」との見方も強まっている。
それぞれの地元紙は、首位逆転のニュースを大きく報じている。
静岡新聞(静岡市)は「茶産出額1位陥落 史上初、鹿児島県に譲る」(電子版は2021年3月13日配信)
との記事で、「解説」を載せ、「業界と産地の垣根を超えて一丸となって静岡茶ブランドの再興に向け改革を進めることが急務だ」と指摘。首位陥落で危機感をあらわにしているのは当然といえるだろう。
一方、南日本新聞(鹿児島市)は諸手を挙げて大喜びかと思いきや、そうでもない。「鹿児島の茶産出額・日本一でも喜べない 家庭の緑茶購入量、50年で半減 消費拡大へ機能性を科学的に証明」との記事(電子版は2021年4月7日配信)で、鹿児島県も生産量が伸びているわけではないことを指摘。全国茶生産団体連合会が総務省の家計調査を基に1人当たりの緑茶購入量(ペットボトル入り飲料を除く)を算出したところ、19年は266グラムと、1970年の527グラムから半世紀にわたる長期低落で半減したとして、機能性を重視した需要喚起の必要を訴えている。(ジャーナリスト 済田経夫)