三木谷CEO反発「意味がわからない」 楽天を日米両政府監視の裏事情

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   日米両政府が、楽天グループに対する監視の目を強めることで一致した。中国IT大手の騰訊控股(テンセント)の子会社が2021年3月に楽天の大株主となったことで、楽天が収集した個人情報が中国当局に流れる懸念が出てきたというのが理由だ。

   楽天は「テンセントの出資は純投資であり、経営に関わることはない」(関係者)と強調しているが、米政府が中国当局主導による強引な個人情報の収集に神経をとがらせるなか、「火の粉」をもろに浴びる形になった。

  • 三木谷浩史会長兼CEOは猛反発!(写真は2018年1月撮影)
    三木谷浩史会長兼CEOは猛反発!(写真は2018年1月撮影)
  • 三木谷浩史会長兼CEOは猛反発!(写真は2018年1月撮影)

米国事業を展開する楽天を「共同監視」

   楽天は携帯電話事業などの投資が響き、2020年12月期に過去最大の赤字に陥った。財務基盤強化のために実施したのが、日本郵政など国内外の企業を引受人にした総額2423億円の第三者割当増資で、引受先の1社がテンセント子会社だ。657億円を出資、楽天の発行済み株式の3.65%を保有する大株主に躍り出た。

   外国為替法は国の安全保障に深くかかわる日本企業に、外国の企業や投資家が一定の出資をする場合、国に事前に届け出ることを義務付けている。巨額の投資資金を武器にした中国が日本の基幹産業に食い込む事態を未然に防ぐため、20年に事前届け出が必要な出資比率を、それまでの「10%以上」から「1%以上」に引き下げた経緯がある。

   通信事業やIT事業を手掛ける楽天も当然ながら「安全保障に深くかかわる日本企業」。本来であれば対為法に基づき、テンセントは国に事前に届け出る必要があるが、テンセントはいまだ手続きをしていない。外為法は経営に関与しない「純投資」であれば、届け出の対象外にしているためだ。

   しかし、ここに立ちはだかったのが米国政府だった。

   楽天は日本に加え、米国でも事業を展開している。テンセントが出資をテコに、楽天の個人データにアクセスできるようになれば、米国の個人情報が楽天経由で中国に流れる恐れが出てくる。こうした米国の問題意識に押される形で、4月の日米首脳会談を前に、日米両政府による楽天の共同監視案が具体化していった模様だ。

「テンセントはテスラにも出資している」

   楽天側は反発を強めている。

   三木谷浩史会長兼最高経営責任者(CEO)は4月30日に東京・六本木で開かれた楽天モバイル関連のイベント出席後、記者団に「3.65%を出資いただいたが、取締役の派遣もない。テンセントはテスラにも出資している一種のベンチャーキャピタルだ」とあくまで純投資だと強調。「何をそんなに大騒ぎしているのか、まったく意味がわからない」と不快感を露わにした。

   産業界では「純投資まで監視対象になるのであれば、中国企業とのビジネスなどできなくなる」と楽天に対する同情論も少なくない。

   一方で「楽天は脇が甘すぎた」(ある政府関係者)との声も強い。

   中国と覇権を争う米国は、中国ハイテク企業に対する締め付けを強めており、バイデン政権に移行後も対中強硬姿勢は変わっていない。テンセントは華為技術(ファーウェイ)、アリババ集団などと並ぶ中国ハイテク産業を代表する企業で、米国は強い警戒の目で同社の動向を監視し続けている。

   こうした状況でテンセントの出資を受け入れた楽天の判断は「火中の栗を拾うようなもの」(前出の政府関係者)。先行投資で垂れ流す楽天モバイルの赤字を埋めるために実施した巨額増資が、米中覇権争いの真っ只中に同社を引き込んだ構図といえる。

   「何を大騒ぎしているのか」と冷静を装う三木谷氏だが、その心中は穏やかではないだろう。(ジャーナリスト 済田経夫)

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