会社で朝礼があり、毎日何かを話さなければならない役職者にとって、ネタ探しは大変だろう。そんな人のために、5月は「朝礼のネタ本」を随時紹介していきたい。
ある会社で営業部長をしている友人がこぼしていた。
「毎日、朝礼で何か話さなければならない。最近は仕事とは関係のないことばかり話している。『へえー』と部下が感心すればいいんだよ。でもネタ切れだ」
そんなゆるい職場では、雑学系の本が参考になるかもしれない。本書「大人の博識雑学1000」は、タイトルどおり、オモシロうんちくネタが1000収められている。朝礼だけでなく、「雑談力」のアップにも役立ちそうだ。
「大人の博識雑学1000」(雑学総研著)KADOKAWAメイン画像 キャプション 飲み過ぎた翌朝に効く! 「飲酒うんちく」で部下の関心をググっと......
飲酒関連のうんちくで「合わせ技」
著者は雑学総研という集団。著書に「誰に書かなかった日本史 『その後』の謎」「誰も書かなかった 世界史『その後』の謎」「なぜ犯人を『ホシ』と呼ぶのか?」などがある。
本書は10のパートに分かれているが、その分類は定かではない。1ページにネタが2つほど載っている。一つのネタは短いので、朝礼で話すと、あっという間に終わってしまう。どう、この本を使ったらいいのか考えた。
そこで思いついたのが「合わせ技」だ。たとえば、こんな調子。
「『飲酒前の牛乳』は本当に二日酔いに効くのか?」という項目がある。「これは半分当たっていて、半分外れている」そうだ。
この説は、牛乳が胃の粘膜をコーティングし、アルコールの吸収を抑えるということを根拠にしているが、「胃に入った食物や飲料は胃の中で撹拌されてしまうため、胃の粘膜をコーティングすることは不可能だ」。
ただし、脂肪(乳脂肪)が胃のぜん動運動を抑制し、アルコールの吸収を遅らせることに加え、たんぱく質がアルコール代謝に役立つことから、「牛乳を飲むこと自体は効果的といえる」としている。
今はコロナ禍で職場の飲み会は厳禁という会社が多いだろうが、送別会などの当日の朝礼には使えるかもしれない。ただ、これだけではいかんせん短すぎる。そこで、「酒のチャンポンは本当に酔いやすいのか?」という項目に話をつなげるのだ。
これは実によく聞くが、科学的には間違っている。酔うか酔わないかは摂取したエタノールの総量によって決まるから、酒の種類を変えることで酔いやすくなることはない。
しかし、「酒の種類が変わることによって気分が変わり、余計に飲んでしまうことで、結果的にエタノールの摂取量が多くなるというのが、酔いの原因と考えられる」と書いている。
「空の上は、地上よりも酒に酔う」はホントか!?
どうせなら、こんなネタも披露したらどうだろう。「酒を飲んだ後にラーメンを食べたくなる謎」。いわゆる「締めのラーメン」だ。飲んだ後の帰り道で、ラーメン屋を見かけると、無性にラーメンを食べたくなるのは生理的な根拠があるという。
「エタノール誘発性空腹時低血糖」と呼ばれる症状だ。アルコールを摂取すると、肝臓がアルコールの解毒・分解をはじめる。「肝臓は寝ている間や食事をとっていないときに糖を体に分配する役割があるが、酒を飲むとアルコールの解毒・分解作業に追われ、糖を分配できなくなる。そのため、血糖値が低くなってしまうのだ」。
ラーメンの小麦粉でんぷんは腸でグルコースという糖に分解されて吸収される。「飲酒後は、この糖を体が欲しているのだ」。雑炊やおにぎりなどを食べたくなるのも同様の現象だ。
「締めのラーメン」には根拠があるが、食べすぎには注意が必要だ。
さらに、飲酒関連では、こんなネタもある。「空の上は、地上よりも酒に酔う」。ジェット旅客機の場合、長距離の国際線なら1万1000~1万3000メートルの高度を飛び、機内は気圧が調整されているものの、1500~2400メートル上空とほぼ同じ気圧だという。
「気圧が低い場所では、いつもより体が低酸素状態になるため、アルコールを分解するのに必要な酸素が十分に供給されず、アルコールの分解・代謝が遅れる。実験によると、酒の効果は約2倍に強まるため、地上で飲むより酔いやすくなるそうだ」
確かに、高い山を登山中にビールを飲むと、酔いが早く回ったのを思い出した。それ以来、評者は下山するまでビールを飲まないようにしている。
このネタは、部下が海外出張する前日の朝礼に使えるのではないだろうか。
オリンピック関連の「合わせ技」はコレ!
東京五輪・パラリンピックの開催が危ぶまれるようになってきた。聖火リレーが続いているが、仮に中止や延期が決まったら、その日はオリンピックネタで行くのはどうだろうか。
「オリンピックの聖火リレーはヒトラーの陰謀で生まれた!?」というネタを披露した後、「ところで、君たちはオリンピックのことを初めて『五輪』と呼んだ人は誰か、知ってるか?」と続けたら、物知りな上司だと感心されるだろう。
答えは1936(昭和11)年、読売新聞の運動部記者としてベルリンオリンピックの報道に携わっていた川本信正氏だ。新聞の見出しに掲載する際、「オリンピック」だと6文字で長いため、どうにか略せないかと相談を受けた川本氏が、5つの輪がシンボルマークだったことから「五輪大会」という言葉を思いついた。
同年8月6日付の読売新聞には「五輪の聖火に首都再建」という見出しが載り、その後、広く使われるようになった。
「世界一危険な生物、それは『蚊だった!』という話に、「O型は蚊に刺されやすいというのは迷信!?」というネタも続くと思った。実験ではO型が最も刺されたので、蚊がO型の血を好むことはわかっているが、「刺されやすい」となると、話は別だ、と書いている。
むしろ、人間の汗のにおいや体温、吐く息などに寄ってくるため、太った人、汗っかき、酒飲みの人が刺されやすいそうだ。また、服の色も影響し、特に黒い服を着ていると刺されやすいという。
「母の日」にはなぜカーネーションを贈るのか? 今年の5月の第2日曜日は、5月9日だ。いつ、誰が、なぜ贈ったかが書かれている。これは5月6日か7日に使えるネタだと思った。
要はタイミングが大事なのだ。こうした雑学本をチェックしておき、「今日だ!」という日に披露するのが肝要だ。事前の準備とタイミング。営業パーソンの基本だろう。雑学も侮れない。(渡辺淳悦)
「大人の博識雑学1000」
雑学総研著
KADOKAWA
924円(税込)