大丈夫か!? 抜けない「親方 日の丸」気質
日本郵政がトールの買収を決めたのは2015年2月。その年の11月には、日本郵政と傘下のゆうちょ銀行、かんぽ生命保険がいずれも東証1部に上場した。
買収を決めた当時の日本郵政社長は、東芝の社長を務めた西室泰三氏(2017年死去)。西室氏ら数人の幹部で決定し、当初は経営会議にも諮らなかったとされている。
買収金額についても、当時から「高値づかみ」との批判があった。そもそも海外企業を買収して、経営しながら組織を改め、企業価値を高めていくノウハウなど、「親方 日の丸」が染みついた日本郵政にあろうはずもなかった。トールには当初見込んだ価値が期待できなくなり、2017年3月期には4000億円を超える減損処理を強いられていた。
日本郵便の傘下に残ったトールHDの国際部門の実質的な価値は、ほぼゼロまで落ち込んでいる。今後のトールの経営戦略について、衣川社長は「時間をかけて議論していく」としか述べず、事実上お手上げ状態になっている。
日本郵政グループでは、不正が相次いで発覚した簡易保険の販売を再開したばかりだが、「本業」でさえ満足に運営できていなかったのに、海外のやっかいな事業の立て直しが果たして可能なのか――。約40万人が働く巨大組織は、発足から10年以上を経ても迷走が続いている。(ジャーナリスト 済田経夫)