【5月の特集 朝礼のネタ本はこれだ!】会社で朝礼があり、毎日何かを話さなければならない役職者にとって、ネタ探しは大変だろう。そんな人のために、5月の特集は「朝礼のネタ本」を随時紹介していきたい
「朝礼」をタイトルに掲げた本もあるが、雑学系の本が多いようだ。もっと社員の心に突き刺さるような内容の本はないのか? そう思っている人にピッタリなのが、本書「1日1話、読めば心が熱くなる365人の仕事の教科書」(致知出版社)である。
月刊誌「致知」の40年分を超すバックナンバーから精選した、仕事論、人生論のインタビュー集。登場するのは、稲盛和夫、城山三郎、王貞治、山中伸弥...... といったビッグネームの人たちだ。
「1日1話、読めば心が熱くなる365人の仕事の教科書」(藤尾秀昭監修)致知出版社
道場六三郎さんが修業時代に思っていたこと
一人1ページに365日分が収められているので、読みやすい。「頑張ろう!」という内容のメッセージがたくさん収められている。
銀座ろくさん亭主人の道場六三郎さんは、こう書き出している。
「修業時代、いつも僕は思っていた。
『人の二倍は働こう』
『人が三年かかって覚える仕事を一年で身につけよう』
ってね」
そのために道場さんは、ネギを切る時、人が2本持って切っていたら、3本持ってやったという。さらに違う野菜でもやったそうだ。
朝礼とは、基本、今日も一生懸命働きましょうということを社員、従業員で確認する作業だ。しかし、抽象的な内容では、心に刺さってこない。誰でも知っている有名人のエピソード、言葉を引用することで、グッと伝わることだろう。
ちなみに、この道場さんの文章のタイトルは、「仕事にも人生にも締め切りがある」。最後は、こう結んでいる。
「それに間に合わせるためには、時間を無駄にせず何事もテキパキとこなさないと。これはどの仕事にも言えるんじゃないかなあ」
「渋沢栄一は三つの『魔』を持っていた」
自分の体験を語っている人もいれば、先人のことを紹介している人もいる。作家の城山三郎さんは「渋沢栄一は三つの『魔』を持っていた」というタイトルで書いている。さすが、作家だ。「論語と算盤」という著書で有名な明治時代の実業家、渋沢栄一に対して、「魔」というマジックワードを結び付け、意表を突いている。
その「魔」とは? 吸収魔、建白魔、結合魔だという。
「学んだもの、見聞したものをどんどん吸収し、身につけてやまない。物事を立案し、企画し、それを建白してやまない。人材を発掘し、人を結びつけてやまない」
それを普通にやるのではなく、とことん徹底して、事が成るまでやめない。そういう情熱、狂気を城山さんは「魔」と呼んでいる。
そして、根本に「魔」がない限り、創業者にはなれない、とも。
NHKの大河ドラマ「青天を衝け」の主人公、渋沢栄一は旬の人だ。ふだん本を読まない従業員でも、大河ドラマは見ているだろう。城山さんの名前は省いて、さも自分が知っているように話せば、あなたを見る目も変わってくるに違いない。
「一風堂」創業者の自分との約束
飲食店で働く人には、こんなメッセージはどうだろう? ラーメン店「一風堂」創業者で力の源ホールディングス社長の河原成美さんの「内なる自分と信頼関係を築く」という言葉だ。
河原さんは会社をクビになり、親にも半ばあきらめられ、自分が生きる道を模索したそうだ。芝居だと思ったが、芝居だけでは食べていけない。大学時代にいくつかの飲食店のアルバイトを経験し、商売に対する好奇心があり、商売を始めた。そして、自分に対して、決め事を3つ作った。
・ 3年間は休まない
・ 売り上げゼロの日をつくらない
・ 35歳までには天職に出会う
結果として、河原さんは3年間、一日も休まずに店を開け続けた。飲み過ぎた日もあったが、休まなかった。
そして3年後、「河原成美もやればできるじゃん」と自分に自信を持ち、そこから人生の扉が開いていったと感じたという。
従業員のモチベーションを上げるには、成功した有名店の創業者のエピソードを披露するといいだろう。
監修者の藤尾秀昭さんは、致知出版社の代表取締役だ。「一道を真剣に生きた人々が語る言葉は、一様にいぶし銀のような光沢を放ち、色とりどりだった」と「あとがき」に書いている。
朝礼に使わずとも、読むだけで、人生が前向きに感じられる効用がある。カロリーが高い本だ。(渡辺淳悦)
「1日1話、読めば心が熱くなる365人の仕事の教科書」
藤尾秀昭監修
致知出版社
2585円(税込)