ホンダEVわが道をゆく 「日本流」CO2ゼロに反旗 欧米に倣いスピード重視

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   ホンダが、2040年に世界の新車販売をすべて電気自動車(EV)か水素を燃料とする燃料電池車(FCV)にする方針を打ち出した。

   世界各国で高まる温室効果ガス削減への流れを受け、EVとFCVの販売比率を段階的に引き上げていく。20年のホンダの世界販売台数は445万台、うちEVとFCVは合計1%にも満たないだけに、きわめて意欲的な目標といえる。

   純粋なガソリン車だけでなく、ハイブリッド車(HV)も含め、走行中に二酸化炭素(CO2)を出すクルマを売らないというもので、米ゼネラル・モーターズ(GM)やスウェーデンのボルボ・カーなどと同様の方針。トヨタ自動車とは、路線の違いが鮮明になった。

  • ホンダは「EVシフト」を打ち出した(画像は、三部敏宏社長。ホンダのホームページより)
    ホンダは「EVシフト」を打ち出した(画像は、三部敏宏社長。ホンダのホームページより)
  • ホンダは「EVシフト」を打ち出した(画像は、三部敏宏社長。ホンダのホームページより)

「2040年に新車から出るCO2をゼロにする」

   三部敏宏(みべ・としひろ)社長は2021年4月23日、東京都内で記者会見を開き、こう発表した。

   ホンダはこれまで、2030年に世界の新車販売の3分の2を、HVなども含む電動車にする目標だったが、これを改め、30年にEVとFCVだけで40%、35年には80%に高める。そのために、24年に北米でGMと共同開発した大型EVを2車種投入、20年代後半に別のEVも発売するという。

   さらに、中国では22年に新型EVを発売し、今後5年以内に10車種のEVを投入。日本では24年に軽自動車のEVを発売する。

   ただし、ハイブリッド車が普及する日本では、EVとFCVの販売比率の目標を30年に20%と、北米や中国の40%に比べて低くした。一気にEVというのではなく、当面はガソリン車をHVに替えていくことを中心にするということだ。

   火力発電などに頼る国内の電力事情から、闇雲にEVを増やしても、国全体のCO2排出抑制には直結しないという判断で、35年で一気にEVとFCVの比率を80%まで高めるとしている。

   こうした目標達成に向け、研究開発費を今後6年間で5兆円と、2019年度までの6年間と比べ約16%増やす。目標実現には電池調達なども課題で、20年代後半にも独自の次世代電池である「全固体電池」を実用化する意向も示した。

   日本政府が2050年に温室効果ガスの排出量を実質ゼロとする方針を打ち出しており、三部社長は会見で、「クルマの保有期間は約10年。『50年ゼロ』にするには40年で新車から出る二酸化炭素をゼロにしないといけない」と述べた。

世界の潮流はEV

2021年4月23日の三部敏宏社長の会見(画像は、ホンダのホームページより)
2021年4月23日の三部敏宏社長の会見(画像は、ホンダのホームページより)

   EVは走行時にはCO2を出さないが、製造工程ではHVなどより多くのCO2を出す。また、日本の発電は化石燃料への依存が高く、EVが増えてもCO2を多く排出してできた電気を充電して走るのでは、トータルのCO2排出量はHVと変わらないともいわれる。

   トヨタ自動車などが、日本ではまだまだHVが中心とみている所以だ。

   それでも、あえてホンダがEVシフトに走るのは、世界の潮流をみてのことだ。英国が2030年までにガソリン車の新車販売を禁じるほか、米カリフォルニア州は35年までに州内で売られる新車は排ガスを出さないクルマにする方針を示している。

   規制強化に対応し、先に紹介したGMやボルボのほか、独フォルクス・ワーゲン(VW)は30年に欧州販売の60%以上をEVにするとしている。

   トヨタは、ホンダの会見に先立つ4月19日、中国・上海モーターショーでEV戦略を発表。2050年にCO2実質ゼロに向け、25年までに新EVシリーズ「TOYOTA bZ(トヨタ ビーズィー)」や、小人数・近距離の利用に特化した超小型EVなど15車種のEVを市場に投入する。その第1弾として、スバルと共同開発のSUVを22年半ばまでにグローバルで販売する――などの計画を示した。

   トヨタがいよいよEVに本腰を入れてきたと評されるが、じつは、トヨタの豊田章男社長は4月22日の日本自動車工業会会長としての会見では、EV第一の風潮を批判し、HVにe-fuelを使うことでCO2排出をゼロに近づける重要性を、改めて強調している。

   e-fuelとは、水を電気分解した水素とCO2を合成した液体燃料で、ガソリンに混ぜて使う。再生可能エネルギーを利用して生成することでCO2排出は実質ゼロになる。

   これについて、ホンダの三部社長は23日の会見で、「既存の燃料より何十倍もコストが高いことが課題だ」と指摘した。従来、トヨタに限らず、ホンダや日産ら日本の大手メーカーはe-fuelの開発に力を入れているとされていたが、三部社長の言い方はやや冷ややかにも聞こえた。「e-fuelの実用化は、欧米や中国のEV拡大のスピードには追い付かない恐れがあり、EVシフトを決断したのではないか」(大手紙経済部デスク)との指摘も出ている。

   ホンダの決断は、従来のトヨタを中心とした日本メーカーの路線からの決別なのか。(ジャーナリスト 済田経夫)

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