世界の潮流はEV
EVは走行時にはCO2を出さないが、製造工程ではHVなどより多くのCO2を出す。また、日本の発電は化石燃料への依存が高く、EVが増えてもCO2を多く排出してできた電気を充電して走るのでは、トータルのCO2排出量はHVと変わらないともいわれる。
トヨタ自動車などが、日本ではまだまだHVが中心とみている所以だ。
それでも、あえてホンダがEVシフトに走るのは、世界の潮流をみてのことだ。英国が2030年までにガソリン車の新車販売を禁じるほか、米カリフォルニア州は35年までに州内で売られる新車は排ガスを出さないクルマにする方針を示している。
規制強化に対応し、先に紹介したGMやボルボのほか、独フォルクス・ワーゲン(VW)は30年に欧州販売の60%以上をEVにするとしている。
トヨタは、ホンダの会見に先立つ4月19日、中国・上海モーターショーでEV戦略を発表。2050年にCO2実質ゼロに向け、25年までに新EVシリーズ「TOYOTA bZ(トヨタ ビーズィー)」や、小人数・近距離の利用に特化した超小型EVなど15車種のEVを市場に投入する。その第1弾として、スバルと共同開発のSUVを22年半ばまでにグローバルで販売する――などの計画を示した。
トヨタがいよいよEVに本腰を入れてきたと評されるが、じつは、トヨタの豊田章男社長は4月22日の日本自動車工業会会長としての会見では、EV第一の風潮を批判し、HVにe-fuelを使うことでCO2排出をゼロに近づける重要性を、改めて強調している。
e-fuelとは、水を電気分解した水素とCO2を合成した液体燃料で、ガソリンに混ぜて使う。再生可能エネルギーを利用して生成することでCO2排出は実質ゼロになる。
これについて、ホンダの三部社長は23日の会見で、「既存の燃料より何十倍もコストが高いことが課題だ」と指摘した。従来、トヨタに限らず、ホンダや日産ら日本の大手メーカーはe-fuelの開発に力を入れているとされていたが、三部社長の言い方はやや冷ややかにも聞こえた。「e-fuelの実用化は、欧米や中国のEV拡大のスピードには追い付かない恐れがあり、EVシフトを決断したのではないか」(大手紙経済部デスク)との指摘も出ている。
ホンダの決断は、従来のトヨタを中心とした日本メーカーの路線からの決別なのか。(ジャーナリスト 済田経夫)